ヨーロッパ南天天文台(ESO)は7月16日、PHANGS(Physics at High Angular Resolution in Nearby GalaxieS)プロジェクトの研究チームが、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)のデータを基に、アルマ望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などのデータを組み合わせて、私達の天の川銀河の近隣にあるたくさんの銀河の星形成領域について、かつてなく鮮明な、いわば「星の新生児室の地図帳(atlas of stellar nurseries)」を作成し公開したと発表しました。
星の形成についてはまだよく解っていないことがたくさんあります。例えば、何がきっかけで星の形成が始まるのか、星は銀河の特定の領域で形成されるのか、もしそうならそれはどうしてか、新しく形成された星はその進化の過程でその後の星の形成にどのような影響を与えるのか、など謎はつきません。
このような星の形成に関わる謎を解明していくためには星が形成される現場を詳しく観測する必要があります。
まず、研究チームはヨーロッパ南天天文台が誇る超大型望遠鏡の超広視野面分光装置(MUSE)を使って、天の川銀河の近隣にあるたくさんの銀河を観測しました。この観測では新しく形成された星やその星によって加熱された星間ガスが観測されました。星が形成されている現場ですね。
続いて、研究チームはアルマ望遠鏡によって観測された冷たい星間ガスの分布に関するデータをこの超大型望遠鏡によって得られたデータに加味しました。冷たい星間ガスは星が形成されるための材料になると考えられています。
そして、さらに、研究チームは、これらのデータにハッブル宇宙望遠鏡の観測データを加味し、可視光、近赤外線、電波などさまざまな波長域での観測結果を組み合わせました。こうして、研究チームは天の川銀河の近隣にあるたくさんの銀河の星の形成領域、いわば星の新生児室のかつてなく鮮明な地図帳を作成することに成功しました。
超大型望遠鏡による観測を率いたエリック・エムセレムさんは「私達は、星を生み出す星間ガスを、直接、観測し、若い星自体を見、それらの若い星の進化を目撃することができます」とコメントしています。
研究チームでは今回の研究成果はこれからの星の形成に関わる観測のための礎になるだろうとしています。
Image Credit: ESO
Source: ヨーロッパ南天天文台
文/飯銅重幸