パデュー大学のStephanie Olson氏らの研究グループは、ある惑星で誕生した生命が複雑な生物へと進化する上で、惑星の自転軸の傾きが大きく影響する可能性を示した研究成果を、第31回ゴールドシュミット国際会議において発表しました。
これまでに4400個以上が見つかっている太陽系外惑星のなかには、恒星からの距離が適度で表面に液体の水が存在する可能性があり、生命の誕生と生息に適した環境を持ち得る「ハビタブルゾーン」を公転しているとみられるものがあります。Olson氏らは今回、地球の生物が呼吸に利用する酸素に注目し、惑星の状態の変化と光合成によって生成される酸素の量の関係を調べるためのシミュレーションモデルを作成しました。
日照時間の増加や大陸の出現といった環境の変化は、どれも何らかの形で海洋循環や栄養物質輸送に影響を及ぼす可能性があり、酸素発生型光合成生物による酸素の生成量を変化させるかもしれません。Olson氏らのモデルでは、海洋環境および海に生息する生物が、日照時間・大気の量・陸地の分布などが変化した時にどのように反応するのかを調べることができるといいます。
研究グループによる分析の結果、公転面(天体の公転軌道が描き出す平面)に対する惑星の自転軸の傾きが、酸素の生成量を左右する可能性が示されました。研究グループによると、シミュレーションモデルで自転軸の傾きを大きくしたところ、生命を維持する栄養物質の量が増えたのと同様の効果がもたらされ、海の生物が生成する酸素の年間平均量が増加したといいます。ただし、天王星のように自転軸が極端に傾いている場合は、生物の増殖を制限する可能性があるようです。
地球の自転軸は公転面に対して約23.4度傾いています。自転軸の傾きは地表の日射量の変化を介して季節の変化が生じる原因となっていますが、この傾きは地球で生命が繁栄する一因にもなったのかもしれません。
また、地球外生命の探索において、系外惑星の大気に含まれる酸素は生命の存在を示す兆候の一つとみなされています。「肝心なのは、適度な自転軸の傾きが複雑な生物への進化をもたらす可能性が高そうだという点です。このことは複雑な生物の探索、おそらくは知的な生物の探索においても絞り込むのに役立ちます」とOlson氏は語ります。
Olson氏らによる今回の成果について、カリフォルニア大学リバーサイド校のTimothy Lyons氏(今回の研究には不参加)は、系外惑星の大気から生物由来の酸素を検出できる可能性が惑星の持つ季節性などの要因によっていかに左右され得るかを示した重要なものだと評価しており、人類の地球外生命探索にとって確実に役立つ成果だとコメントしています。
関連:古代の天体衝突は予想よりも多く起きていた? 地球の大気に大きな影響を及ぼした可能性
Image Credit: NASA Ames/JPL-Caltech/T. Pyle
Source: EurekAlert!/AAAS
文/松村武宏