ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスは7月21日、国際宇宙ステーション(ISS)へ新たに追加される多目的実験モジュール(MLM)「ナウカ(Nauka)」(露:Наука、「科学」の意味)を搭載した「プロトンM」ロケットの打ち上げを実施しました。
カザフスタンのバイコヌール宇宙基地200番射点から予定通り日本時間7月21日23時58分に打ち上げられたナウカは、発射台を離れてから9分40秒後にプロトンMの3段目から分離。高度375.5×199.0kmの地球周回軌道へ投入することに成功しました。ロスコスモスによると、軌道投入後のナウカからはアンテナと太陽電池アレイが展開されたことを示すデータも届いているとのことです。
▲ナウカを搭載したプロトンMの打ち上げダイジェスト動画▲
(Credit: Roscosmos)
日本実験棟「きぼう」のようにスペースシャトルを使って軌道上に輸送されたISSの日米欧側のモジュールとは異なり、ロシアの大型モジュールには姿勢制御・軌道制御用のエンジンや太陽電池アレイなどが備わっていて、単独で飛行することが可能です。ナウカは今後数日かけて徐々に高度を上げていき、日本時間7月29日22時26分にISSロシア区画のサービスモジュール「ズヴェズダ(Zvezda)」の下部(天底側)にドッキングする予定です。
ロシア区画の新たな実験棟となるナウカは船内と船外での科学実験に対応しており、実験装置等を出し入れできる小型のエアロックや、欧州で開発された「欧州ロボットアーム(ERA:European Robotic Arm)」を装備。船内は宇宙飛行士の休憩場所としても利用される予定で、内部にはトイレや水再生システム、酸素生成装置も搭載されています。さらに、ナウカはISS全体のロール制御や、有人宇宙船「ソユーズ」および無人補給船「プログレス」のドッキング場所としての役割も担います。
なお、ナウカの船外に取り付けられるエアロックのチャンバーやラジエーターといった一部の機器類は、11年前の2010年5月にスペースシャトルで打ち上げられたロシア区画の小型研究モジュール1(MRM-1)「ラスヴェット(Rassvet)」の外面に取り付けられる形ですでにISSへ運ばれています。これらの機器類を取り付ける際には欧州ロボットアームが用いられます。
また、日本時間7月23日には、ナウカにドッキング場所を譲って廃棄されることが決まっているロシアのドッキング室「ピアース(Pirs)」の分離が予定されています。ピアースの分離と廃棄には現在ピアースにドッキング中の無人補給船「プログレスMS-16」が用いられる予定で、分離は日本時間同日22時17分、大気圏再突入は分離の4時間後とされています。
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Image Credit: Roscosmos
Source: Roscosmos
文/松村武宏