イギリスの王立天文学会は、全国天文学会議2021(National Astronomy Meeting 2021)において、サウサンプトン大学の博士課程の学生であるファビアン・ギティンスさん率いる研究チームが、新しいコンピューターモデルに基づいて、中性子星の地表面に存在する、いわゆる「山」の高さを新しく推定する研究成果を報告したと発表しました。
太陽質量の8倍以上の質量を持つ恒星はその最後に大爆発を起こします。いわゆる超新星爆発です。
そして、その後には、ブラックホールや中性子を主成分にする中性子星が残されます。
このようなでき方からも解るように中性子星は非常に高密度な天体です。直径20kmほどの大きさに太陽ほどの質量が詰め込まれています。
そのため、その地表面(原子核と電子からなる固体の地表面があると考えられています)における重力は、非常に強く、凹凸があればほとんどならされてしまいます。つまり中性子星はほぼ完全な球形をしています。
とはいえ、中性子星の地表面に凹凸が全くないというわけではありません。では、中性子星の地表面にある、いわゆる山の高さはどれくらいになりうるのでしょうか?
これまでの研究では中性子星の山の高さは数センチメートルほどになりうると考えられてきました。
しかし、研究チームがより現実の中性子星に近いコンピューターモデルをつくり計算したところ、中性子星の山の高さはせいぜい数分の1ミリメートルほどにしかなりえないことが解りました。これはこれまでの推定の1/100ほどの高さということになります。
実は、高速回転している中性子星に山のようなものがあると、重力波が発生します。そして、この重力波を観測すれば、謎の多い中性子星についてさまざまな情報を得ることができるわけですが、残念ながら、現在、まだこのような重力波の観測には成功していません。ちなみに、重力波とは、重い天体などが加速度運動したときに発生する時空の微小な揺れで、「時空のさざ波」とも呼ばれています。
ファビアンさんによれば、今回の研究成果から、高速回転する中性子星からの重力波の観測は、これまで考えられていたよりも、より難しいものと考えられるといいます。
日本が誇る重力波望遠鏡「KAGRA」などのこれからの進歩に期待が高まります。
Image Credit: ESO / L. Calçada
Source: 王立天文学会
文/飯銅重幸