季節は地球の自転軸の傾きによって決まります。7月は北半球では夏ですが、南半球では冬を迎えています。地球と太陽との間の距離で季節が決まるわけではありません。
しかし、2021年7月5日は、地球から見た太陽の大きさが(2021年で)最も小さくなっていました。逆に1月2日は、最も大きくなっていました。つまり、7月5日は地球と太陽との距離が最も遠く(遠日点)、1月2日は最も近かった(近日点)ことの現れなのです。
こちらの画像は、同じ望遠鏡とカメラで撮影された近日点頃(1月5日)と遠日点頃(7月3日)の太陽の写真を比較したものです。とはいっても、近日点と遠日点での太陽の見かけの直径のちがいは3%強しかありません。
だから、その変化はなかなか意識されません(注意:観察しようとして絶対に太陽を直接見てはいけません! 目を痛め失明する恐れもあります!)。
最も大きな月を「スーパームーン」と呼ぶことがあります。「スーパームーン」は明確な定義ができないため正式な天文学用語ではありませんが、毎年のように話題になります。こちらの画像は、ある年の最も大きな月(スーパームーン)と最も小さな月(マイクロムーン)を比較したものです。
この画像を見ると、最も大きな月は最も小さな月よりも14%大きく、30%明るく見えていることがわかります。太陽の大きさの3%の差と比べると14%の差はかなり大きいように見えます。
このちがいは地球と月のそれぞれの公転軌道のちがいによるものです。太陽の周りの地球の軌道はほぼ円ですが、地球の周りの月の軌道は、それに比べて楕円になっているからです。
天体の軌道が円からどのくらい離れているかを示す値を「軌道離心率」(離心率)と呼びます。その値が「0」ならば円、「1」に近づくほど細長い楕円になります(「1」は楕円ではなく放物線になります)。
地球の現在の軌道離心率は0.0167であり、月は0.0549なので、月の方が地球よりも少しだけ細長い楕円軌道で公転していることがわかります。つまり遠地点と近地点との差が大きくなります。そのため見た目の大きさに差が出てくるのです。
夜空に月を二つ並べて比較することはできませんが、最も大きな月と最も小さな月との間には数値上それなりの差があるので「スーパームーン」に注目が集まるのでしょう。しかし、最も大きな太陽と最も小さな太陽との間の差はわずかしかありません。
だから、「スーパーサン」という言葉はありませんが、もしあったとしても、あまり注目はされないでしょう。
また、太陽系の惑星、準惑星、彗星などの軌道離心率を調べ、比較してみるのもおもしろいです。
Image Credit: Richard Jaworsk , NASA JPL-Caltech , Shutterstock
Source: APOD , NASA (1) (2) , 天文学辞典(日本天文学会)
文/吉田哲郎