マレーシアの衛星オペレーターMeasat(以下、ミーアサット)社は、6月21日に異常に陥ったとされる通信衛星「ミーアサット3(MEASAT-3)」で提供していた放送事業主へのサービスを別の通信衛星へ移転させたと発表しました。
ミーアサット社は放送事業者に対して通信サービスや映像サービスを提供している企業です。同社は世界人口の約80%をカバーするアジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど150カ国以上にサービスを提供しており、NHKの英語放送「NHKワールドプレミアム」も同社の通信衛星を利用しています。
ミーアサット3の異常を最初に検知したのは地球軌道上のスペースデブリ(宇宙ゴミ)や人工衛星の混雑を監視する米国ExoAnalytic社の宇宙状況把握(SSA)システムで、同衛星が6月21日に静止軌道上の東経91.5度の位置から外れ、西に向かって漂流し始めたといいます。その後、同衛星は軌道を修正しようと軌道マヌーバを何度か試みたものの、7月1日以降、軌道マヌーバは確認されなくなったといいます。
ミーアサット社によると、ミーアサット3を活用したほぼすべての放送事業者に向けてのサービスは、同衛星と同じ東経91.5度の静止軌道にあるミーアサット社もしくは別の事業者が運用する通信衛星を用いることで復帰が完了したとのことです。
一方、ミーアサット3が異常をきたした根本原因については、製造を担当したボーイング社の「ボーイング衛星システム」(BSS)で詳しい調査が続けられています。また、ミーアサット社はほかの通信衛星との干渉を避けるためにミーアサット3のトランスポンダ(応答装置)を停止させており、同衛星の位置を追跡するために米国国防総省が運営するSSAシステム「Space-Track.org」経由で連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)に位置を通知。同衛星の軌道上の位置をほかの衛星オペレーターに知らせるとのことです。
Image Credit: Measat
Source: Via Satellite, SPACENEWS, Measat
文/Misato Kadono