欧州宇宙機関(ESA)は、将来の宇宙ミッションを制御するソフトウェア基盤「EGS-CC(European Ground System – Common Core)」を使った最初の宇宙機である超小型衛星「OPS-SAT」の運用実験に成功したことを発表しました。ESAによると、欧州宇宙運用センター(ESOC)においてOPS-SATの監視と制御が行われ、コマンドの送信とデータ受信に成功しています。
実験に特化した小型衛星「OPS-SAT」2019年12月に打ち上げられたOPS-SATは「空飛ぶ実験室」とも呼ぶべきCubeSat規格の超小型衛星(3Uサイズ)で、ミッション・コントロールや衛星に搭載されたシステムの検証と妥当性を確認するために開発されました。OPS-SATは高さが約30cmしかないにもかかわらず、現在ESAが運用する宇宙機の10倍以上の処理能力を持つ実験用コンピューターが搭載されています。
▲ソフトウェア基盤「EGS-CC」の検証に使用された実験用衛星「OPT-SAT」▲
ミッション・コントロール・システムの検証は非常に難しいため、ESAは既存の貴重な人工衛星を使ってリスクを負うことは避けたいと考えました。そこで、検証中に発生が予想される故障や誤動作に対して堅牢で、なおかつ低コストな実験用の衛星として、OPS-SATが開発されました。
将来の宇宙ミッションに適した「EGS-CC」ESAは地球の陸地・海・気候の観測をはじめ、深宇宙の観測、将来計画されているスペースデブリ(宇宙ゴミ)の回収や地上への運搬も含めて、さまざまな形態の宇宙ミッションを遂行しています。ESAが開発したEGS-CCには、こうした宇宙ミッションでソフトウェア基盤を共有できるところに意義があるといいます。ESAはEGS-CCの利点として、宇宙ミッションで使用される宇宙機のニーズや目的に沿って設計することで貴重な時間と資源を無駄なく使えると述べています。ESAによると、分散した複数のオペレーターがEGS-CCを活用することで、従来よりも大きな宇宙ミッションに挑戦できるといいます。
EGS-CCの活用が期待される軌道上サービスEGS-CCの活用が期待されるのが、宇宙機の燃料補給、修理、軌道離脱をサポートする一連の軌道上サービスです。地球軌道上ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)が増え続けており、その対策としてESAでは軌道上サービスの技術開発を計画しています。こうしたミッションでは様々な機器が必要となるうえに、宇宙空間での予測できない状態に適応しなければならず、なおかつ異なる組織による複数のミッションが連携して宇宙機の制御を共有する必要があるといいます。ESAによると、EGS-CCはこうした作業にも正確に適応できるとされています。
Image Credit: ESA
Source: ESA
文/Misato Kadono