こちらは「ろくぶんぎ座」の方向およそ440万光年先にある矮小不規則銀河「ろくぶんぎ座A(Sextans A)」です。若い星々が放つ青い輝きと、新たな星が生み出される星形成領域の存在を示す赤い輝きのコントラストが印象的です。
不規則銀河とは、天の川銀河やアンドロメダ銀河(M31)のような整った構造を持たず、星々が無秩序に集まっているような銀河のこと。ろくぶんぎ座Aはそのなかでも軽くて小さな矮小不規則銀河(dwarf irregular galaxy)に分類されていて、その直径は天の川銀河の20分の1に相当する約5000光年しかありません。
米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、小さな銀河は大きな銀河との相互作用がもたらす影響を受けやすく、不規則な形状につながることもあるといいます。また、ろくぶんぎ座Aは幾度かの超新星爆発によって歪み、独特な正方形の姿をしているとされています。NOIRLabではその様子を、若く明るい星々で満たされた宇宙の宝石箱と表現しています。
冒頭の画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データから作成されたもので、NOIRLabの今週の一枚「The Cosmic Jewels of Sextans A」として2021年6月30日付で公開されています。
ダークエネルギーカメラは満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できる巨大なデジタルカメラ(画素数約520メガピクセル)のような観測装置で、その名の通りダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発されました。ダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されましたが、その後も運用が続けられています。
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Image Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA
Data obtained and processed by: P. Massey (Lowell Obs.), G. Jacoby, K. Olsen, & C. Smith (AURA/NSF)
Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
Source: NOIRLab
文/松村武宏