NASAは7月23日、NASAの火星探査機インサイト(InSight)の地震計のデータを使って、火星の地殻、マントル、コアの深さ、大きさ、構造などについてその詳細が明らかにされたと発表しました。研究成果は、3本の論文にまとめられ「Science」誌に掲載されました。
なお、インサイトはNASAの火星探査機で、2018年11月に火星のエリシウム平原に着陸し、Perseveranceなどの火星探査車とは違って移動はしませんが、地震計などを使って火星の内部構造などを調べています。
■火星の内部構造はどうなっているの?太陽系の惑星は大きさが数kmほどの微惑星が衝突・合体を繰り返すことで形成されました。そのため形成された当初はとても高温で表面はマグマに覆われていました。そして、ケイ酸塩(地殻やマントルの主成分)、鉄などの物質は、その比重に従って沈んでいき、最初の数千万年ほどをかけて、惑星の内部は地殻、マントル、コアに分化していったと考えられています。
火星も基本的にこのような構造をしています。
では、今回の研究成果に従って、火星の内部構造を詳しくみていくことにしましょう!
まず、火星の地殻です。火星の地殻は、期待されていたよりも薄く、2層構造ならば20kmほど、3層構造なら37kmほどになるといいます。
続いては、火星のマントルです。火星のマントルは地表から1560kmほどの深さにまで及んでいるといいます。ちなみに火星の直径は6779kmほどです。地球の直径の半分ほどですね。
そして、最後は火星のコアです。火星のコアは、半径が1830kmほどで、今回、溶解していることが確認されました。
地球のコアは、外側は溶解していますが、内側は溶解しておらず固体のままです。研究チームでは、火星のコアについても地球のコアと同じことが言えるかどうかを確認するために、さらにインサイトのデータの分析を進めています。
最後に、コアに関する論文の主著者であるスイス研究大学ETHチューリッヒのサイモン・シュテーラーさんは「科学者が地球のコアの大きさを測定するのに数百年かかりました。また、アポロ計画の後、科学者が月のコアの大きさを測定するのに40年かかりました。しかし、インサイトは2年で火星のコアの大きさを測定することができました」と誇らしげにコメントしています。
では、後編では、研究チームがどのようにして火星の内部構造を調べたのかについて詳しくお話していきたいと思います。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/飯銅重幸