こちらは「オリオン座」の方向にあるハービッグ・ハロー天体「HH 111」です。観測には人の目に見えない赤外線の波長が使われたため、画像の色は擬似的に着色されたものとなります。画像には、視野全体に漂う雲の中央付近から右上と左下に向かって、間欠的に噴き出すジェットのような構造が写っています。
ハービッグ・ハロー(Herbig-Haro)天体とは、生まれたばかりの星の周囲にみられる星雲状の天体です。欧州宇宙機関(ESA)によると、活動が活発な若い星はイオン化したガスの細く絞られたジェットを両極方向に高速で噴出することがあるといいます。このジェットが秒速数百kmで若い星の周囲にあるガスや塵の雲に衝突して輝いたものが、ハービッグ・ハロー天体だと考えられています。つまり、2本のジェットの根元にあたる画像中央の雲の中には、若い星が存在していることになります。
ESAによると、こうした若い星は主に人の目に見える可視光線の波長で光を放っているものの、豊富な塵やガスが可視光線の多くを吸収してしまうので、観測するのが難しいようです。ガスや塵の影響を受けにくい赤外線を利用することで、ハービッグ・ハロー天体をうまく観測できるのだといいます。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Astronomy in Action」として、ESAから2021年8月30日付で公開されています。
関連:若い星から噴き出すジェット、南天“ほ座”のハービッグ・ハロー天体
mage Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Nisini
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏