もっとも渦巻銀河らしい形をした渦巻銀河の1つ、と言えるのではないでしょうか。この銀河は「M74」と呼ばれ、うお座の方向、3200万光年の彼方にある渦巻銀河です。
もちろん渦巻銀河は他にもたくさんありますが、M74の1つの特徴は地球から見たときにちょうど渦巻の形が正面に見える「フェイスオン」であることです。それに対し渦巻銀河を横から見るような角度になっている場合を「エッジオン」と呼びます。エッジオン銀河にもきれいな画像はありますが、フェイスオンのこのM74はやはり見栄えのする1枚です。(天文学での観測上の違いについてはこちらの記事をご覧ください。)
銀河は明るさや見た目の形からいくつかの形態に分類されます。soraeの特集「銀河」にいろいろな銀河のタイプが載っていますが、M74はその中で渦巻が比較的はっきりした「Sc」というタイプです。この画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影したもので、おもに渦巻を形作っている明るく青い光と暗い部分はそれぞれ、星の集団とダストレーン(固体の微粒子が集まっている領域)です。赤みを帯びた光は水素原子からの光を捉えたもので、星が生まれつつある領域を示しています。
ところでM74の「M」はフランスの天文学者メシエの頭文字をとったもので、M74はメシエが作った天体のカタログに載っている銀河の1つです。画像では明るく見えますが、メシエカタログの他の銀河よりも暗く、幻の銀河(Phantom Galaxy)とも呼ばれています。
Image Credit: NASA, ESA, Hubble, HLA; Processing: Mehmet Hakan Ozsarac
Source: NASA
文/北越康敬