こちらは「いて座」にある天の川銀河の中心方向を捉えた画像です。言い換えれば、夜空にかかる天の川の一部を拡大したもの。視野全体をびっしりと埋め尽くす数え切れないほどの星々に圧倒されます。天の川銀河の中心部分には数多くの星が集まったバルジ(銀河バルジ)と呼ばれる膨らみがあり、その周りを渦巻腕が取り巻いています。ここにはバルジのごく一部(0.5×0.25度の範囲)しか捉えられていませんが、それでも画像に含まれる星の数は18万を上回るといいます。
次の画像はさらに広い範囲(約4×2度、長辺の幅は満月約8個分)を示したもので、冒頭の画像は右下の一部分に相当します。バルジの星々と地球の間にある星間物質(ガスや塵)によって青い光が散乱されることで、星からの光は赤みがかって見えています。この現象は星間赤化(interstellar reddening)と呼ばれています。
これらの画像は、チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使ったサーベイ観測プロジェクト「Blanco DECam Bulge Survey」にて撮影されたもので、米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)から2020年10月27日付で公開されています。
NOIRLabによると、このプロジェクトでは天の川銀河の中心方向およそ200平方度(いて座からさそり座にかけての満月約1000個分の範囲)に存在する星々が近紫外線・可視光線・近赤外線の波長で観測されており、中心付近に存在する恒星の大部分が100億年以上前に生じた激しい星形成活動によって一気に形成されたことが明らかになったといいます。
ダークエネルギーカメラは3平方度(満月約14個分の広さ)を一度に撮影できる巨大なデジタルカメラ(画素数約520メガピクセル)のような観測装置で、その名の通りダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発されました。ダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されましたが、その後も運用が続けられています。
関連:ダークエネルギーカメラが撮影した電波銀河「ケンタウルス座A」の姿
Image Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA/STScI, W. Clarkson (UM-Dearborn), C. Johnson (STScI), and M. Rich (UCLA)
Source: NOIRLab / STScI
文/松村武宏