NASAは9月9日、「NASAの科学者に質問!」と題していくつかの企画記事を公開しました。今回はこの企画記事の中から面白そうな記事を1つみなさんにご紹介したいと思います。テーマはズバリ地球の微生物が火星に運ばれる危険性はないのか?です。
NASAは2021年2月18日に火星探査車「Perseverance(パーサヴィアランス、パーセべランス)」を火星のジェゼロ・クレーターに着陸させました。そして、それ以外にもキュリオシティなど多数の火星探査車を火星に送り込んでいます。
もし、地球の微生物がこのような火星探査車に付着して、火星までの旅を生き延びたら、火星が地球の微生物によって汚染されてしまう危険性がありますね。では、このような危険性が本当にありうるのでしょうか?
この点に関して、NASAの科学者ムーゲガ・クーパー博士は「YES!」と元気一杯に答えています。
まず、宇宙空間はとても過酷な環境です。真空で、紫外線や宇宙線に曝され、日向の温度は120℃ほど、日陰の温度は-120℃ほど、その温度差は240℃ほどにもなります。そのため、ほとんどの地球の微生物は火星にたどり着く前に死んでしまいます。
しかし、一部の微生物はこのような過酷な環境を生き延びる可能性があるといいます。それは芽胞をつくる微生物です。
これらの微生物は生存に適さない過酷な環境下では、種子のような細胞構造である芽胞(endospores)を形成して、休眠状態に入ります。そして、生存に適した環境になると、この芽胞が発芽して、復活します。
NASAでは、火星探査車などを火星に送るときには、徹底的なクリーニングをおこなっていますが、このような芽胞を形成する微生物については、特に念入りにクリーニングしているそうです。
おかげで、パーサヴィアランスを含むマーズ2020ミッション(the Mars 2020 mission)で運ばれた微生物はティースプーン一杯分の海水に含まれている微生物の数の1/10にもならないといいます。
ムーゲガ・クーパー博士によれば、もしも火星で生命がみつかった場合には、地球の生命に由来するものではないと確信をもっていえるそうです。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/飯銅重幸