2021年9月21日の満月は「中秋の名月」。旧暦8月15日の夜に見えるこの満月は作物が収穫の時期を迎える農業との結びつきが強く、里芋を供えることから「芋名月」(いもめいげつ)と呼ばれることもあります。
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昨今は新型コロナウイルス感染症の影響でライフスタイルに大きな変化がもたらされています。仕事や授業がリモートで行われるために通勤・通学の時間が減ったり、プライベートでの外出を控えたりしていることで、夜空に輝く月を目にする機会が少なくなった人も多いのではないでしょうか。
地球から何万光年、何億光年も離れた銀河や星雲といった天体の姿も素晴らしいものですが、今回は光の速さなら3秒あれば往復できる身近な天体「月」の美しい姿を捉えた画像をピックアップしてみました。
冒頭の画像は国立天文台から公開されている満月の画像です。1月に撮影されたものなので中秋の名月ではありませんが、明るい高地や暗い海、南半球のティコ・クレーターから伸びる何本もの光条といった、月面のさまざまな特徴がはっきりと捉えられています。多くの人が思い浮かべる「満月」の姿に近いのではないでしょうか。
いっぽう、こちらはカナリア天体物理学研究所(IAC)から公開されている満月の画像です。月面の細部を強調するためにコントラストが調整されているため、冒頭に掲載した国立天文台公開の満月画像とは異なる印象を受けます。
■赤色や黄色から紫色まで、色とりどりの満月を集めたコレクション満月の色はいつも同じとは限りません。夕日が赤く見えるのと同じように、地平線や水平線の近くにある月は赤やオレンジ色に見えることがあります。これは、月が反射した太陽の光が地球の大気中で長い距離を進むうちに波長の短い青い光が散乱されて、波長の長い赤い光が私たちの目に届くからです。
アメリカ航空宇宙局(NASA)が公開しているこの画像では、ワシントンD.C.の議会議事堂すぐ上に浮かぶ赤い月が捉えられています。
また、こちらの画像には、天体写真家のMarcella Giulia Paceさんがイタリア各地で10年以上に渡り撮影した様々な色の満月が集められています。筆者が思い浮かべる満月は一番外側の左~下にかけての色合いですが、これほど色とりどりの満月があるのかと思うと驚きです。
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■満月と地平線、国際宇宙ステーションからの眺め満月は地表だけでなく宇宙からも見ることができます。こちらは高度約400kmの軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)でNASAの宇宙飛行士Jeff Williamsさんが撮影した満月です。
地球低軌道からの眺めは宇宙飛行士とごく一部の民間人しか体験したことがありませんが、宇宙旅行が身近になれば、より多くの人々がこのような満月を楽しめるようになるかもしれません。
■月を横切る国際宇宙ステーションいっぽう、こちらは満月近くの月を横切る国際宇宙ステーションを捉えた画像です。右上に国際宇宙ステーションが影のように写っているのがわかりますでしょうか。これはアマチュア写真家のDylan O’Donnellさんが2015年6月30日19時54分(現地時間)にオーストラリア東部のバイロン・ベイで撮影したもので、画像は月面の色合いの違いが目立つように処理されています。
地上から見た国際宇宙ステーションが月を横切るのに要する時間はわずか1秒未満。人類が構築した最大の人工天体である国際宇宙ステーションと天然の衛星である月の共演の瞬間が見事に捉えられています。
■2021年の月の満ち欠けを精密に再現最後に紹介するこちらの動画はNASAのゴダード宇宙飛行センターが作成したもので、2021年1月1日から12月31日までの「月の満ち欠け」が1時間単位で再現されています。月面の画像にはNASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」の観測データが用いられていて、月の見かけの大きさの変化や、地球を周回する月の軌道の形や自転軸の傾きがもたらす「秤動(ひょうどう)」などが精密に再現されています。
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ちなみに、9月21日の中秋の名月を含めて、今年はあと4回満月を見る機会があります。好転に恵まれた夜は、ほんの数分だけでも輝く月を眺めてみませんか?
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Source: 国立天文台 / IAC / NASA(1), (2) / ESA(1), (2) / APOD
文/松村武宏