こちらは「おとめ座」の方向およそ5500万光年先にある楕円銀河「M89(Messier 89)」を捉えた画像です。楕円銀河には渦巻銀河や棒渦巻銀河が持つ渦巻腕のような目立った構造はみられませんが、天の川銀河よりもわずかに小さなM89には約1000億個の星々が含まれていて、その中心には質量が太陽の10億倍もある超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。
画像全体にはM89の球状星団が光の点として幾つも写っています。球状星団は数十万個ほどの恒星が互いの重力に引き寄せられて密集している天体で、M89には2000個を上回る球状星団が存在するとみられています。画像は一見するとM89を上に寄せた構図のように思えますが、右上で明るく輝いている領域はあくまでもM89の中心部分にすぎないのです。ちなみに、M89の明るい中心部分の下には別の渦巻銀河を横から見た姿も小さく写っています。
欧州宇宙機関(ESA)によると、真円に近い形をしているM89はその名の通り楕円体になることが多い楕円銀河のなかではめずらしいものの、地球に対する向きの兼ね合いで真円に近い姿に見えていることも考えられるといいます。その中心部分からはガスと塵の構造が最大15万光年も伸びていて、かつてこの銀河が活発に活動していたことを示唆しているといいます。また、M89は銀河どうしの合体で生じた可能性があるシェル構造に囲まれていることも知られており、現在観測されているM89の姿は小さな銀河との合体によって比較的最近形成された可能性があるようです。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されていた「広域惑星カメラ2(WFPC2)」による可視光線と赤外線の観測データから作成されたもので、欧州宇宙機関から2019年1月14日付で公開されています。
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, S. Faber et al.
Source: ESA/Hubble / NASA
文/松村武宏