アルマ望遠鏡は9月13日、アルマ望遠鏡の天文学者であるペイ・イン・シーエさん率いる研究チームが、天の川銀河の中心部では、星の形成が起こるのに十分な条件がそろっているのに、実際には星の形成が起こっていないことを発見したと発表しました。
天の川銀河の中心部には超大質量ブラックホールが潜んでいると考えられ「いて座A*(いてざえーすたー)」と呼ばれています。そして、この「いて座A*」の周囲には濃いガスの円盤(circumnuclear disk)が回っています。
このガスの円盤は「いて座A*のエサ」になると共に、星形成の材料にもなります。
研究チームは、アルマ望遠鏡を使って、一硫化炭素を観測し、この円盤のガスが、どれくらいの割合で「いて座A*」のエサになり、また、星形成の材料になるのかを調べていました。
すると、大変面白いことが解りました。
星が形成されるためには、ガスが互いの重力によって集まる必要があります。ところが、超大質量ブラックホールの近くでは、その重力のために、ガスがバラバラに引き裂かれて、挙句の果てには、超大質量ブラックホールに呑み込まれてしまいます。これを防ぐためにはガスの密度がある程度濃い必要があります。
こちらの画像では、点はガスの塊を表していますが、黄色い点は、ガスが比較的に薄く「いて座A*」の重力によって引き裂かれてしまうと考えられるもの。緑色の点は、ガスが比較的に濃く「いて座A*」の重力によって引き裂かれることは免れますが、星を形成しうるほどには濃くないと考えられるもの。そして、紫色の点はガスが星を形成しうるほどに濃いと考えられるものを表しています。紫色の点、たくさん存在していますよね。ところが、この領域では、不思議な事にも、新しい星の形成は観測されていません。
つまり、この領域では、星を形成できるだけの濃いガスの塊が多数存在するにも関わらず、不思議なことにも星が形成されていないのです。
研究チームでは、その原因はこの付近に存在している磁場ではないかと推測しています。
シーエさんは「高い解像度と優れた感度を誇るアルマ望遠鏡を使って、さらに観測を続け、天の川銀河の中心部における星形成において磁場が果たしている役割を明らかにしていきたい」とコメントとしています。
Image Credit: Hsieh, P.-Y. et al. - ALMA (EOS/NAOJ/NRAO)
Source:アルマ望遠鏡のプレスリリース
文/飯銅重幸