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グリニッジ天文台が「天体写真コンテスト」2021年の受賞作品を発表!

sorae.jp 2021年10月1日 22時48分

今年もこの季節がやってきました。イギリスのグリニッジ天文台は現地時間9月17日、同天文台が開催した天体写真コンテスト「Astronomy Photographer of the Year 2021」の受賞作品を発表しました。全11部門にノミネートされた素晴らしい作品の数々から、その一部をご紹介します。

■貴重なチャンスを逃さず撮影された金環日食

【The Golden Ring(Credit: Shuchang Dong)】

こちらは、2021年の総合優勝に輝いたShuchang Dongさんの作品「The Golden Ring」です。

「Our Sun(われわれの太陽)」部門の優勝作品でもあるこの写真は、2020年6月21日にアフリカからアジアで観測された金環日食を撮影したもの。日食は太陽・月・地球が一直線に並ぶときに起こる現象ですが、地球から月までの距離が一定ではないために、太陽の全体が月に隠される皆既日食になることもあれば、写真のように太陽が月からはみ出て見える金環日食になることもあります。

「天体写真家として見逃すはずがありません」と語るDongさんは、一年を通して晴天に恵まれるというチベット西部のガリ地区で金環日食の撮影に臨んだものの、当日の空は一面が厚い雲に覆われていました。Dongさんが不安な気持ちでその瞬間を待っていたところ、金環日食まであと1分足らずというギリギリのタイミングで、雲を貫いた太陽の光が地上に届きはじめました。写真の撮影後、太陽は吸い込まれるようにして再び雲に隠されたといいます。

「日食は何千年ものあいだ世界中の人々を惹きつけてきました」と語る審査員の一人、グリニッジ王立博物館のEmily Drabek-Maunderさんは「この画像は日食の美しさとシンプルさだけでなく、その背後にある科学も示しています」とコメントしています。

■リング状の天の川、月と金星、偶然撮られた流星

【The Milky Ring(Credit: Zhong Wu)】

続いては「Galaxies(銀河)」部門で優勝したZhong Wuさんの作品「The Milky Ring」です。完成までに2年を費やしたというこの作品は、中国とニュージーランドで撮影された数多くの天の川の画像をもとに作成されています。先日も天の川がリング状に見える南北両半球の夜空をつなぎ合わせた作品をご紹介しましたが、Wuさんの作品は天の川そのものをテーマとしているのが特徴です。審査員を務めたラスカンパナス天文台の天文学者にして天体写真家のYuri Beletskyさんは、天の川という定番のテーマに対する新たなアプローチである点や、バランスの良い画像処理、美しい構図を評価しています。

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【Beyond the Limb(Credit: Nicolas Lefaudeux)】

次の作品は「Our Moon(われわれの月)」部門で優勝したNicolas Lefaudeuxさんの「Beyond the Limb」です。写真の下半分を占めているのは地球の月。その上に浮かぶ三日月形の天体というとアポロ計画で撮影された地球を思わせますが、ここに写っているのは金星です。昼間に撮影されたこの写真は、月による金星食(月が金星を覆い隠す現象)の直前を捉えたもので、雲に覆われた金星の輝きとは対照的に岩だらけの月はとても暗く見えたとLefaudeuxさんは振り返ります。

【A colourful quadrantid meteor(Credit: Frank Kuszaj)】

最後は「Planets, Comets and Asteroids(惑星、彗星、小惑星)」部門で優勝したFrank Kuszajさんの作品「A colourful quadrantid meteor」です。水平に横切っている一本の印象的な光の筋は、地球の大気に突入した流星が残した流星痕。カラフルな色は、流星や地球の大気を構成する様々な物質に由来しています。実はこの画像、soraeでも2021年2月に一度ご紹介しているのですが、撮影時のエピソードをKuszajさんが語っています。

2021年1月の寒い夜、Kuszajさんは2人の友人とともに銀河や星雲を撮影していました。Kuszajさんが「しし座の三つ子銀河」に狙いを定めてカメラのセットアップを終えた時、夜空に出現した明るい流星に3人は畏敬の念を抱きます。息を呑んだ瞬間の後、友人の1人がKuszajさんに「君のカメラが向いていた方向じゃない?」と尋ねましたが、小さく見える銀河を撮るためにズームを調節していたので、流星は写っていないはずだとKuszajさんは思ったといいます。

ところが、いざカメラをチェックしてみると、流星が完璧に捉えられていました。Kuszajさんがカメラのズーム操作を忘れていたので、流星が流れることをあらかじめ知っていたかのような構図で撮影されていたのです。「私の単純ミスが幸せな出来事をもたらしました。不思議な体験でした」とKuszajさんは振り返ります。審査員のYuri Beletskyさんは「この世で最も幸運な写真の一つであることは間違いありませんが、同時にその背後には信じられない感動的なストーリーが秘められています」とコメントしています。

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なお、グリニッジ天文台の公式Webサイトで公開されているコンテストの特設ページでは、各部門の入賞作品がすべて公開されています。どの作品も素晴らしいものばかりですし、撮影機材や露光時間などの技術的な情報も記載されているので、興味を持たれた方は以下のURLを是非ご覧下さい!

関連外部リンク:Astronomy Photographer of the Year 2021 WINNERS(https://www.rmg.co.uk/whats-on/astronomy-photographer-year/galleries/2021-overall-winners)

 

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文/松村武宏

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