JAXAは、観測ロケットSS-520 3号機の実験を行うと発表しました。実験の期間は2021年11月3日から11月16日までで、観測ロケットの打ち上げは11月3日14:00〜18:00(日本時間)の間に実施されるということです。この実験はNOSA(ノルウェー宇宙庁)の協力のもと行われ、ノルウェーにあるアンドーヤ・スペースセンター スバルバードロケット実験場から打ち上げられます。
この実験では、高緯度にある電離層のカスプと呼ばれる領域へロケットを打ち上げます。これまで実施されてきた実験や観測により、大量の電離層イオンがカスプ領域から地球を取り巻く磁気圏へ逃げ出していることが明らかにされてきました。また極域にあるカスプ領域は、一部の磁気圏に磁力線がつながった領域であり、太陽風が直接入り込む場所として知られています。この実験では、電離大気流出が起きているカスプ領域にて、その原因として考えられている「波動ー粒子相互作用」を、新たに開発された観測装置を用いて、世界で初めて検出することを目指したミッションであるということです(S-520-3号機観測ロケット実験の進捗状況 2021)。
観測ロケットSS-520 3号機の打ち上げは本来ならば、2017年12月6日から19日の間に行われる予定でした。しかしロケット搭載機器の不具合により延期され、その後も予算の関係やコロナウイルスによる影響で2021年11月に設定されました。
SS-520ロケットは2段式の観測ロケットで、直径520mm。打ち上げ時の重量は約2,600kgであり、140kgのペイロードを高度800kmまで打ち上げる能力を持ちます。またロケットに3段目を付け加えることで、地球周回軌道に「ミニ衛星」を打ち上げることが可能です。なお、SS-520 5号機は「世界最小の軌道ロケット」としてギネス登録されています。
Image Credit: JAXA
Source: JAXAプレスリリース
参考文献:齋藤義文,小嶋浩嗣,小川泰信「S-520-3号機観測ロケット実験の進捗状況」、『観測ロケットシンポジウム2020講演集』2021年
ISAS観測ロケット「SS-520」紹介ページ
文/出口隼詩