アメリカのフロリダ工科大学は10月、自由浮遊惑星に生命が存在する可能性を研究しているフロリダ工科大学の宇宙生物学者マナスヴィ・リンガムさんの最新の研究内容を紹介する記事を公開しました。今回はこの記事を元に自由浮遊惑星に生命が存在する可能性について最新の研究成果をご紹介していきたいと思います。
まず、自由浮遊惑星とはどの恒星系にも属さない惑星です。暗く冷たい宇宙空間を孤独に旅しています。名古屋大学などの研究チームによる推定によれば、私達の天の川銀河内だけでも4000億個ほどもの自由浮遊惑星が存在すると推定されています。
では、このような自由浮遊惑星に生命が存在する可能性はあるのでしょうか?
リンガムさんによれば「ある」といいます。
まず、地球のように海を持つ惑星が恒星系の外に放り出されたとします。すると、宇宙空間は極寒ですので、やはり海の表面は凍り付いてしまいますが、その下は液体の状態が維持される可能性があるといいます。なぜなら、表面の氷が断熱材として働くと共に、惑星のコアに含まれる放射性物質が自然崩壊することで熱が発生するためです。
リンガムさんによれば、自由浮遊惑星が惑星が形成されてから間もなく恒星系から放り出された場合にはこの可能性はより高まるといいます。惑星が形成されてから間もなくはコアにおける地熱活動がより盛んなためです。
また、もし自由浮遊惑星が衛星を持っていれば、その衛星の内部では潮汐加熱によって熱が発生する可能性もあるようです。
しかし、仮に氷の下に液体の海が存在するとしても、生命はどこからエネルギーを得ることができるのでしょうか?
リンガムさんによると、その方法の1つとしてクエーサー(活動銀河核)からの電磁波が考えられるといいます。
ほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールが潜んでいますが、この超大質量ブラックホールに物質が呑み込まれていくときには、物質は渦を巻きながら呑み込まれていきます。この渦巻状の円盤が「降着円盤」です。
降着円盤内は、呑み込まれていく物質同士の摩擦によって熱が発生し、非常に高温になります。そのため、X線、可視光線から電波までさまざまな電磁波で光り輝きます。これがクエーサーの正体です。
自由浮遊惑星がクエーサーがある銀河の中心から1000光年未満ほどの範囲内にあれば、このクエーサーからの電磁波を使って、光合成をおこない、生命を維持することができる可能性があるといいます。
ところで、実は、地球上の微生物については、生存に太陽の光を必要とする微生物よりも、生存に太陽の光を必要としない微生物の方が多いことが解っています。
研究の次の段階として、リンガムさんは、このように生存に太陽の光を必要としない微生物について分析するなどして、微生物が低温、低圧力などどのような極限状況まで生き延びることができるのか、確かめていきたいとしています。
もしかしたら、そのうち「太陽系に迷い込んできた自由浮遊惑星で生命が発見された」なんて夢のような話が現実になるかもしれませんね!
Image Credit: A. Stelter / Wikimedia Commons
Source: フロリダ工科大学/DISCOVER
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)