こちらは南天の「インディアン座」の方向およそ2億光年先にある渦巻銀河「NGC 6984」です。中心部の明るい銀河バルジを取り巻く渦巻腕は、若く高温な星の青い輝きに満ちています。渦巻腕に点在する赤い輝きは若い星が放射した紫外線によって水素ガスが電離したHII領域で、NGC 6984のあちこちに新たな星を生み出す星形成領域が分布していることがわかります。
欧州宇宙機関(ESA)によると、NGC 6984では2012年と2013年に相次いで超新星「SN 2012im」および「SN 2013ek」が観測されたことで研究者の注目を集めました。超新星のタイプは先に起きたSN 2012imが「Ic型」、SN 2013ekが「Ib型」とみられています。Ib型とIc型の超新星は、どちらも水素の外層を(Ic型はヘリウムの層も含めてより多くの物質を)失った大質量星の中心部が重力崩壊することで起こると考えられています。
ESAによれば、2つの超新星は宇宙の尺度からすれば事実上同じ場所・同じタイミングで発生した別々の超新星でした。これほど近い場所で1年以内に同じクラスの超新星が2つ独立して起きる可能性は非常に低いとされており、2つの超新星が何らかの形で物理的に関連しているのではないかとも推測されているといいます。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による可視光線・近赤外線・紫外線の観測データから作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Cosmic Fireworks」としてESAから2021年11月1日付で公開されています。
なお、NGC 6984は超新星SN 2013ekが輝いていた2013年にもハッブル宇宙望遠鏡によって観測されています。ESAによると、ハッブルの観測データは研究者が2つの超新星の関連性を見出す上での助けになることが期待されており、連星の生涯についての重要な手がかりを得ることにつながるかもしれないとのことです。
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Milisavljevic
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏