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JAXA、観測ロケットSS-520-3号機の打ち上げに成功 カスプ領域へ向けてロケットを発射

sorae.jp 2021年11月8日 11時22分

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、11月4日(木)に観測ロケットSS-520-3号機の打ち上げに成功したと発表しました。

SS-520-3号機は、ノルウェーにあるアンドーヤスペースセンタースバルバードロケット実験場から打ち上げられ、950秒後に同実験場南南西海上へ落下したということです。この実験は高緯度領域に存在するカスプ領域と呼ばれる場所にロケットを打ち上げて、同領域におけるプラズマ流出現象の解明を目的としており、日本、ノルウェー、アメリカの3カ国共同で実施されました。今後は観測結果などを分析し、論文などにまとめて公開するとのことです。

【▲ SS-520-3号機の軌跡(Credit: JAXA)】

観測ロケットSS-520-3号機は、現地時間11時9分25秒にノルウェーの実験場から発射。JAXAによると、発射上下角は80.7度、最高到達高度は打ち上げ490秒後に756kmを記録したということです。また当日の天候は晴れで、南西の風3m/s、気温は−8℃でした。

この実験は電子・イオン・電磁場観測装置、地上にあるレーダーやオーロラ撮像用カメラによる観測結果を組み合わせてプラズマ流出現象の解明を目指します。太陽からはプラズマ粒子が放出されています。この粒子は地球へ届いた後、一部が磁力線にそって極域のカスプ領域へ入り込んでおり、これらの粒子が薄い大気のある層(電離層)へ飛び込むことで、粒子のエネルギーにより電離層に波動が発生。その波動により電離層の大気イオンが加熱され、電離層から流出する現象が起きています。この実験では、ロケットをカスプ領域の、大気イオンが加熱されている場所にロケットを送ります。これにより世界で初めて北極圏上空における大気イオンと波動の相互作用によるイオンの加熱などを直接観測し、現象のメカニズムを解明することを目指します。また、この現象は地球だけでなく、金星や火星などの天体で観測されている現象で、他の天体における大気イオン流出メカニズムを理解することにもつながります。

観測ロケットSS-520は2段式で、140kgのペイロードを高度800kmまで打ち上げる能力を持ちます。ロケットに3段目を加えることで、地球周回軌道に「ミニ衛星」を打ち上げることが可能です。なお、SS-520-5号機は「世界最小の軌道ロケット」としてギネス登録されています。

【▲ 打ち上げ準備が進められるSS-520-3号機(Credit: JAXA)】

なお、打ち上げ実験の様子は宇宙科学研究所(ISAS)のホームページ(ノルウェーより)に写真ととも掲載されています。ノルウェーに現れた綺麗なオーロラやロケットの細部の写真を見ることができます。

 

訂正:一部表記と最高到達高度の数値に誤りがありました。9日午前に表記を修正いたしました。

Image Credit: JAXA
Source: JAXA/ISAS
文/出口隼詩

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