恒星の爆発的な現象である「超新星」を一度でも見ることができたら幸運と言って良いでしょう。現在では、肉眼では見えなくとも、宇宙望遠鏡などのお陰で、遠くの銀河で発生した超新星を画像や映像を通して見る機会が増えました。それでも、これまで3つ見られた同じ超新星の4つ目を遠からず見ることができるとしたら、さらに幸運ではないでしょうか?
2016年「AT2016jka」と呼ばれる(Requiem「レクイエム」とも名付けられている)超新星がハッブル宇宙望遠鏡の観測により発見されました。画像の左側のフレームで、オレンジ色の弧状の部分に白色の円で、その超新星が表示されています。
この3つの像は、遥か彼方にある銀河(推定距離は約100億光年)内の1つの超新星の光が、その手前にある巨大な銀河団「MACSJ0138」(推定距離は約40億光年)の重力によって曲げられて分裂し生じたものであることがわかりました。つまり、アインシュタインの一般性相対性理論によって予測された「重力レンズ」効果によるものです。
ところが、話はこれで終わりではありません。超新星から出た光は、銀河団やダークマターなどの影響を受け、迷路のような経路を通過してくるため、それぞれの像が現れるには時間差が生じます。観測結果やそのような影響を考慮に入れてモデルを構築していきます。その結果、最良のコンピュータ・モデルによると、16年後の2037年に4つ目の像が現れると予測されているのです!
右側のフレームは2019年に撮影されたものですが、2016年のフレームで示されていた1つの超新星の3つの像がすべて消えてしまったため、白色の円が空になっています。代わりに、左上に新たな黄色の円が表示されていて、そこに4つ目の超新星が現れると予測されています。ただし、経路の質量分布や超新星の明るさなど曖昧な部分もあるので、2年ほどのズレが生じる可能性があるということです。
しかし、さらに予測が精緻化され、注意深く監視されていれば、2037年前後には4つ目の超新星を捉えることができるにちがいありません。
いまから16年後といえば、今年生まれた赤ちゃんが青春を謳歌している年頃でしょうが、天文学的なタイムスケールでは一瞬にも満たない時間です。
その「一瞬」を平和に過ごして2037年を待ちたいものです。
関連:銀河団の重力が歪めた100億光年彼方の銀河の像、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影
Image Credit: NASA, ESA, Hubble; Data: S. A. Rodney (U. South Carolina) et al.; Image Processing: J. DePasquale (STScI)
Source: APOD、NASA
文/吉田哲郎