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「1年」がわずか16時間、観測史上2番目に熱い太陽系外惑星が見つかる

sorae.jp 2021年11月27日 21時0分

【▲木星サイズの系外惑星が主星の手前を横切る様子を描いた想像図(Credit: NASA, ESA and G. Bacon)】

マサチューセッツ工科大学(※)のIan Wongさんを筆頭とする研究グループは、「ヘルクレス座」の方向およそ855光年先に太陽系外惑星「TOI-2109b」が見つかったとする研究成果を発表しました。

研究グループによると、この系外惑星は主星の「TOI-2109」をわずか16時間という短い周期で公転しており、(天文学的なスケールで)そう遠くない将来に主星へ落下するのではないかと予想されています。

※…研究当時、現在はアメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センター

■木星よりも一回り大きな巨大ガス惑星、昼間の表面温度は摂氏約3330度と推定

今回発見されたTOI-2109bは、木星と比べて直径が約1.35倍、質量が約5.02倍と推定されています。研究グループによると、TOI-2109bから主星までの距離は太陽から水星までの平均距離のおよそ4.2パーセント(約240万km)と非常に近く、TOI-2109bの公転周期……言い換えれば「1年」は約16時間しかないといいます。

公転周期が10日を下回るような木星サイズの系外惑星は、主星の放射によって高温に熱せられているとみられることから「ホットジュピター」と呼ばれています。人類はすでに4500個以上の系外惑星を発見していますが、発表によるとそのうち約400個がホットジュピターに該当するといい、TOI-2109bの公転周期は既知の巨大ガス惑星としては最も短いとされています。

TOI-2109bの場合、主星に非常に近い小さな軌道を公転していることに加えて、主星のTOI-2109は太陽よりも一回り大きく表面温度の高いF型星であることから、TOI-2109bの表面温度はかなり高くなっているようです。地球から見てTOI-2109bが主星の裏側へ回り込む「二次食」の観測データを研究グループが分析した結果、TOI-2109bの昼側の表面温度は摂氏およそ3330度(約3600ケルビン)と推定されています。

発表によると、この温度はホットジュピター「KELT-9b」(推定される昼側の表面温度は摂氏約4300度)に次いで系外惑星の観測史上2番目に高いとされています。太陽よりも小さな恒星である赤色矮星(M型星)の表面温度は摂氏3000度を下回ることもありますから、TOI-2109bの昼間の表面温度は一部の恒星の表面温度よりも高いことになります。

【▲系外惑星KELT-9b(右)と恒星KELT-9(左)を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

その特性を分析した研究グループは、TOI-2109bが主星へさらに接近する段階にあると考えており、1周16時間で公転するTOI-2109bの軌道はいずれ主星へと落下するスパイラル(らせん)を描くことになると予想されています。Wongさんは「いかにして惑星が主星に近づくのか、運が良ければ1年か2年で検出できるかもしれません」と語ります。

「この惑星が主星へ落下する様子を私たちが生きているうちに見ることはないでしょう。でも1000万年後にこの惑星は存在しないかもしれません」(Wongさん)

また、Wongさんは、ホットジュピターのような惑星は太陽系には存在しておらず、研究者はその加熱された大気における物理的・化学的プロセスを理解し始めたばかりだと言及しています。TOI-2109bはNASAの系外惑星探査衛星「TESS」の観測データ(※)から見つかりましたが、研究グループは「ハッブル」宇宙望遠鏡や打ち上げ予定日が迫る「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡などによるTOI-2109bの追加観測に期待を寄せています。

※…TESSは系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに系外惑星を検出する「トランジット法」を用いて観測を行っています(参考:NASA探査衛星「TESS」の観測データから新たな手法で「周連星惑星」を発見)

研究に参加したマサチューセッツ工科大学のAvi Shporerさんは、公転周期がわずか数日の軌道に移動してホットジュピターとなった巨大ガス惑星を研究し、その存在を説明する上で、TOI-2109bの観測がその手助けを得る機会になると考えているとコメントしています。

 

関連:「1年」が地球の1日よりも短いスーパーアースを観測、すばる望遠鏡などの観測成果

■この記事は、Apple Podcast科学カテゴリー1位達成の「佐々木亮の宇宙ばなし」で音声解説を視聴することができます。

Image Credit: NASA, ESA and G. Bacon
Source: マサチューセッツ工科大学
文/松村武宏

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