アメリカのアリゾナ州にある大型双眼望遠鏡(Large Binocular Telescpe)は10月26日、アリゾナ大学スチュワード天文台の天文学准教授であるブレンダ・フライさんなどが参加する国際研究チームが、大型双眼望遠鏡も参加する観測から、地球から110億光年離れたところに、異常な(extraordinary)スピードで星が誕生している原始銀河団「G237」を発見したと発表しました。
宇宙は銀河団と銀河団がフィラメント(filaments=繊維)でつながれた、いわば三次元化されたクモの巣のような構造をしています。これを宇宙の大規模構造といいます。
原始銀河団G237は、地球から110億光年離れた、このようなフィラメントとフィラメントとが交差する結び目のところにあります。宇宙が誕生してから30億年後に形成され、将来、銀河団が集った超銀河団に成長すると考えられています。
このようなG237は当初、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のプランク衛星の観測によって見つかりましたが、その後、大型双眼望遠鏡とすばる望遠鏡の力を合わせた追加観測によって、63個の銀河が含まれていることが確認されました。
で、驚くべきことは、このG237における、星が誕生するスピードです。そのスピードは、少なくても私達の天の川銀河の1000倍にもなり、次々に巨大な銀河が形成されています。
では、G237はどのようにしてこのような異常なスピードを維持しているのでしょうか?すぐに星の材料となる水素ガスを使い果たしてしまいそうです。
この点、現在、研究チームでは、銀河と銀河の間に広がる水素ガスがフィラメントを通じてG237に供給されているのではないか、と考えています。
そして、フライさんは、今年の12月に予定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げを楽しみにしているといいます。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と大型双眼望遠鏡が力を合わせることで初めて、何がこの異常な星の誕生のスピードを可能にしているのか、などを解き明かすことが可能になるからだそうです。
Image Credit: ESA/Herschel and XMM-Newton; NASA/Spitzer; NAOJ/Subaru; Large Binocular Telescope; ESO/VISTA. Polletta, M. et al. 2021; Koyama, Y. et al. 2021/ESA/Herschel and XMM-Newton; NASA/Spitzer; NAOJ/Subaru; Large Binocular Telescope; ESO/VISTA. Polletta, M. et al. 2021; Koyama, Y. et al. 2021
Source: 大型双眼望遠鏡
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)