青い帯が、月面を赤い月と灰色の月に二分するかのように横切っています。青い帯は、もちろん実在しますが、普段はなかなか見ることができません。
冒頭の画像は、先月(2021年11月)「ほぼ皆既月食」とも言われた部分月食のとき、中国の塩城(Yancheng)で撮影されたHDR(High Dynamic Range)画像とのこと。デジタル処理によって月の明るさを均一にし、色が誇張されています。
右下の灰色の部分は、太陽光が直接当たっている月の自然な色。
左上の赤い部分は、地球の影になっていて太陽光は直接当たっていません。しかし、太陽光が地球の大気を通過する際、太陽光に含まれる波長の長い赤い光はあまり散乱されないため、大気がレンズのような役割を果たして屈折し、赤い光で間接的に月を照らすのです。原理的には夕焼けが赤く見えるのと同じです。赤い月は「ブラッドムーン」(blood Moon、血の月)と呼ばれることがあります。
一方、珍しい青い帯は、高い位置にある地球の大気(成層圏)が関係しています。成層圏にはオゾンが存在していて、オゾンの多い部分は「オゾン層」と呼ばれています。成層圏まで到達した太陽光の中で、波長の長い赤い光はオゾンに吸収されやすいため、波長の短い青い光だけがオゾン層を通過します。その青い光が月面に投影され、青い帯として見えることがあるのです。
この青い帯は「ターコイズフリンジ」(turquoise fringe)とも呼ばれ、月食の本影と半影の境目に現れます。
肉眼で見るのはむずかしく、双眼鏡や小さな望遠鏡での観測や、カメラでの撮影が適しているとのこと。今度、月食を観測するチャンスがあれば、見えるかどうか試してみてはどうでしょう?
Image Credit: Angel Yu、国立天文台
Source: APOD、NASA、国立天文台
文/吉田哲郎