月面の上空に浮かぶ変わったシルエットはISS(国際宇宙ステーション)です。えっ、ISSが月を周回する軌道に? いいえ、ISSは地上約400㎞の地球低軌道を周回する有人実験施設です。もちろん月を周回しているのではなく、そのように見えているだけです。
冒頭の画像は、先月(2021年11月)アメリカのアリゾナ州で正確なタイミングを狙って撮影されました。ISSが月を横切る様子を撮影した映像の中から、1/2000秒の画像を部分的に組み合わせて合成されたもので、複雑な構成になっているとのこと。
ISSのシルエットをよく見ると、太陽電池パネルやトラス(骨組み)の輪郭が写っています。また、左上には直径85㎞にもなる明るく大きな「ティコ」クレーターが見えます。
APOD(Astronomy Picture of the Day)では、時々、ISSが月の上空を周回しているかのような画像が掲載されます。今回は、そのような「ISSと月のコラボ」画像を何枚かご紹介します。
こちらは色鮮やかな月面を横切るISS。2015年6月30日、オーストラリアのニューサウスウェールズ州で撮影されました。
とくに青い色が目を引きます。色彩は画像処理によって強調されていますが、月面の化学組成の違いに対応した本物の色彩です。右上にある「ティコ」クレーターから明るい「光条」が放射状に月面を横切っている様子がよくわかります。
次の画像は2020年11月3日に望遠鏡で撮影されたISSと月面。
一見何気ない画像に見えますが、その日の20年と1日前(2000年11月2日)に第1次長期滞在クルーがISSに到着。さらにもう一つ、ISSのシルエットの右側、暗く滑らかに見える月の「静かの海」にアポロ11号の着陸地点があるのです。1969年7月20日のことでした。
つまり、この画像には宇宙開発史上2つの画期的な出来事が表現されていたというわけです。
最後は三日月を横切るISS。2020年2月18日、アメリカのニューメキシコ州で撮影されました。
現地時間午前6時25分、空は明るくなり始めたばかりですが、上空400kmを周回するISSはすでに朝日を浴びています。よく見ると、右上には赤っぽい(黄色っぽい)星が輝いています。これは火星です。この日、北米では「火星食」が見られ、すでに火星が月の後ろから姿を現していました。
地球を周回するISSの画像や映像、つまりISSから撮影した地球表面や大気光などの光景はとても美しく、目を楽しませてくれますが、「ISSと月のコラボ」画像もひと味違った趣が感じられて、おもしろいと思います。
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Image Credit: Andrew McCarthy、Dylan O'Donnell、Derek Demeter (Emil Buehler Planetarium)、Paul Schmit, Gary Schmit
Source: APOD (1) (2) (3) (4)、NASA
文/吉田哲郎