こちらは南天の「かじき座」の方向およそ5500万光年先にある銀河「NGC 1515」とその周辺の様子。画像の中央でひときわ大きく見えているのがNGC 1515です。
画像を公開した米国科学財団の国立光学・赤外天文学研究所(NSF/NOIRLab)によると、NGC 1515は渦巻銀河と棒渦巻銀河の中間にあたる形態を持つ銀河とされています。ぼんやりとした輝きに包まれながら渦巻くNGC 1515のすぐ右上に見えるのは、中心に棒状構造を持つ棒渦巻銀河「NGC 1515A」です。
NGC 1515は「かじき座銀河群」と呼ばれる銀河の集団に属しています。銀河群は数十個ほどの銀河から成る、銀河団よりも小さな集団です。NOIRLabによれば、銀河群は銀河の移動速度が比較的遅い(秒速約150km程度)ことが特徴の一つとされていて、同じ銀河群に属する別の銀河と相互作用しやすいのだといいます。
また、NGC 1515やNGC 1515Aの周囲には無数の光点が写っていますが、これらのほとんどは遥か彼方の宇宙に存在する何千もの銀河です。この小さな輝きの一つ一つにも、何百億、何千億という恒星が存在しているはず。そのなかには地球が公転する太陽のように、生命を育む星もあるかもしれません。
この画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データから作成されたもので、NOIRLabから2021年12月29日付で公開されました。ダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発されたダークエネルギーカメラは満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できる巨大なデジタルカメラ(画素数約520メガピクセル)のような装置で、2013年から2019年にかけて観測が実施されています。
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Image Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA
Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
Source: NOIRLab
文/松村武宏