こちらは「うお座」の方向およそ2億1500万光年先にある渦巻銀河「NGC 105」です。「ハッブル」宇宙望遠鏡の観測データから作成されたこの画像では、若く高温な星々の存在を示す青い輝きが散らばる渦巻腕が、多くの星が集まる中心部分の明るい銀河バルジを何重にも取り巻く様子が精細に描き出されています。
NGC 105のすぐ左上には「LEDA 212515」と呼ばれる別の銀河が写っています。2つの銀河は衝突するほど近づいているように見えますが、欧州宇宙機関(ESA)によるとLEDA 212515はNGC 105よりもさらに遠くに存在しており、衝突しそうに見えるのは地球との位置関係がもたらした偶然の産物なのだといいます。
ちなみに、接近して互いに重力で影響を及ぼし合っている銀河は「相互作用銀河」と呼ばれていて、そのなかには長い尾を伸ばしたような姿をしていたり人の笑顔に見えたりするものもあります。
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また、NGC 105の右上に見えている明るい天体は天の川銀河の恒星であり、こうして同じ画像に収まるNGC 105とは2億光年以上の距離を隔てて輝いています。NGC 105の周囲には遥か遠くに存在する銀河も無数に写り込んでおり、宇宙の広がりと歴史の長さを感じさせる一枚です。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データから作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Galactic Conjunction」としてESAから2022年1月3日付で公開されています。
※…記事中の距離は天体が発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています(参考:遠い天体の距離について|国立天文台)
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Jones, A. Riess et al.
Acknowledgement: R. Colombari
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏