アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのBrian Powellさんを筆頭とする研究グループは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS(テス)」の観測データを分析した結果、約20日周期で不安定な減光が起きる星が見つかったとする研究成果を発表しました。星を周回する比較的小さな天体から放出されるダスト(塵)の雲が減光の理由である可能性が高いと研究グループは考えているものの、原因はまだ特定されておらず、さらなる観測が待たれます。
■一定の周期を保ちつつも不安定に減光、ダストの雲が原因かTESSは太陽系外惑星の検出を主な目的として2018年4月に打ち上げられた宇宙望遠鏡です。大半の系外惑星は直接観測することはできませんが、TESSは惑星が恒星の手前を横切る「トランジット」という現象を起こした時に恒星の明るさがごくわずかに暗くなる様子を捉える「トランジット法」を利用して、間接的に系外惑星の存在を検出してきました。
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4台のカメラが搭載されているTESSは、全天で26個設定されている「セクター」と呼ばれる領域(24度×96度)を対象に、各セクターでそれぞれ27日間集中して観測を行ってきました。その観測データは系外惑星の検出だけでなく、超新星やブラックホールに引き裂かれた恒星の研究などでも広く利用されています。
今回研究グループが報告したのは、南天の「りゅうこつ座」の方向およそ2400光年先にある「TIC 400799224」と呼ばれる恒星です。機械学習を利用したツールを使ってTESSの観測データから注目すべき天体を探していた研究グループは、明るさがわずか数時間で25パーセント近くも減少する上に、減光中にも明るさが何度か増減するという複雑なパターンを示したTIC 400799224を偶然発見しました。
超新星全天自動サーベイ「ASAS-SN」などTESS以外の様々な観測手段によるデータを分析した研究グループは、TIC 400799224が2つの恒星からなる連星であり、不思議な減光は19.77日周期で繰り返されていることを発見しました。ところが周期性が規則的ないっぽうで、光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線、ライトカーブ)の形状、減光率、減光の継続時間は不安定であり、少なくとも地上の観測では3回に1回以下の頻度でしか減光が検出されていなかったことも判明したといいます。
変光星のなかには連星の相互作用によって周期的に明るさが変化するものもありますが、研究グループはTIC 400799224で観測されるこの減光について、連星のどちらかを周回する小天体から散発的に放出されるダストの雲が原因ではないかと考えています。ダストの雲による減光率は高く、小天体が公転する恒星の光を最大37パーセントもしくは75パーセント遮る(連星をなす2つの恒星のどちらを公転しているかによって異なる)と推定されています。
ただ、減光をもたらすダストの起源についてはまだよくわかっていないようです。太陽系の準惑星「ケレス」のような天体が崩壊することで形成されたと仮定すると、ダストの雲は消滅するまで約8000年間存在し続けると予想されています。しかし研究グループによると、TIC 400799224の減光は19.77日という厳密な周期性が少なくとも6年間に渡って保たれており、ダストを放出している天体そのものは無傷であるように思われるといいます。研究グループは今後も観測を継続するとともに、過去の観測データを参照して数十年に渡る減光の様子を明らかにすることを予定しています。
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Image Credit: NASA's Goddard Space Flight Center
Source: ハーバード・スミソニアン天体物理学センター
文/松村武宏