こちらは冬の星座としておなじみ「オリオン座」の一角を捉えた画像です。背景は可視光線で撮影された星空の画像(Digitized Sky Survey 2より)で、そこに電波(サブミリ波)を用いて観測された星雲の画像が赤や黄色で着色された上で組み合わされています。
電波で観測された画像の左側を占めているのは「NGC 2024」と呼ばれる輝線星雲で、「火炎星雲(Flame Nebula)」の別名でも知られています。望遠鏡で見た時の姿からこのように名付けられたのですが、電波観測の画像に現れた姿は(着色に使われた色も相まって)まさに揺らめく炎そのものといった印象です。
火炎星雲の右側に見えているのは反射星雲の「NGC 2023」で、その右上には有名な暗黒星雲「馬頭星雲」の姿も写っています。これらの星雲は「オリオン座分子雲」と呼ばれる広大な星形成領域の一部を成していて、地球からは1300~1600光年離れています。
火炎星雲などの電波観測には、チリのアタカマ砂漠に建設された口径12mの電波望遠鏡「APEX」(Atacama Pathfinder Experiment、アタカマ・パスファインダー実験)が用いられました。APEXは星間雲に含まれる一酸化炭素(CO)から放出された電波を捉えています。画像を公開したヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、火炎星雲とその周辺の領域に存在する星間雲は地球から遠ざかるように運動しており、画像の色は黄色から赤になるほどより速く遠ざかっていることを示しているといいます。
ちなみに、火炎星雲という呼び名や画像の着色に用いられた色からは温度が高いような印象も受けますが、実際にはこれら星間雲の温度はとても低く、ESOによると数十ケルビン程度(摂氏マイナス200度以下)なのだそうです。火炎星雲周辺の画像は冬のホリデーシーズンと2022年の新年をお祝いする画像として、ESAから「Orion’s fireplace」(オリオンの暖炉)と題して2022年1月4日付で公開されています。
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Image Credit: ESO/Th. Stanke
Source: ESO
文/松村武宏