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40万もの銀河の位置を示した最新の「三次元宇宙地図」が公開される

sorae.jp 2022年1月17日 22時13分

【▲ ダークエネルギー分光装置「DESI」の観測データをもとに作成された、地球を中心とした三次元宇宙地図(Credit: D. Schlegel/Berkeley Lab using data from DESI; Acknowledgment: M. Zamani (NSF's NOIRLab))】

黄色から赤色へのグラデーションに彩られた扇のようにも見えるこちらの画像は、地球を中心とした半径100億光年(※)以内の宇宙に存在する銀河の位置を示した最新の三次元宇宙地図、その断面を示したものです。無数に描画された点の1つ1つが、それぞれ1つの銀河を表現しています。画像を公開した米国科学財団の国立光学・赤外天文学研究所(NSF/NOIRLab)によると、この宇宙地図では全部で40万個の銀河の位置が示されているといいます。

次の画像は中央付近を拡大したものですが、巨大な泡や蜘蛛の巣にもたとえられる「宇宙の大規模構造」が描き出されているのがわかります。数多くの銀河が集まる銀河団、銀河団どうしをつなぐ糸状構造のフィラメント、銀河が希薄な空間であるボイドといった構造が、この三次元宇宙地図では実際の観測データから示されています。

【▲ 冒頭画像の中央付近を拡大したもの(Credit: D. Schlegel/Berkeley Lab using data from DESI; Acknowledgment: M. Zamani (NSF's NOIRLab))】

三次元宇宙地図の作成に用いられたデータは、アリゾナ州(アメリカ)のキットピーク国立天文台にある口径4mのメイヨール望遠鏡に設置された観測装置「DESI」(Dark Energy Spectroscopic Instrument、ダークエネルギー分光装置)によって取得されました。DESIは宇宙の膨張におけるダークエネルギー(暗黒エネルギー)の影響を測定するために作られた観測装置で、2021年5月から本格的な科学観測を開始したばかりですが、NOIRLabによるとDESIは観測開始から7か月間で750万個の銀河の測定をすでに終えたといいます。

立体的な地図を作成するために、DESIは天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を通して数多くの銀河の「赤方偏移」を調べる、赤方偏移サーベイと呼ばれる観測を実施しています。この宇宙は膨張しているため、天体を発した光は長い距離を進むうちに波長が長く伸びていきます。これが(宇宙論的な)赤方偏移と呼ばれる現象です。赤方偏移の量(zで示される)は光が進んだ距離が長ければ長いほど大きくなるため、地球からその銀河までの距離を測るために用いることができるのです。

【▲ セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡が撮影した渦巻銀河「NGC 1515」と、その周辺に見える無数の銀河。赤方偏移を調べて銀河までの距離を測定すれば三次元の宇宙地図を作ることができる(Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

NOIRLabによると、理想的な条件下であればDESIは一晩で10万以上もの銀河を分光観測できるといい、2021年11月だけでも250万個の銀河をカタログ化したといいます。DESIは2026年までに全天の3分の1を観測して110億光年先までの3500万個の銀河やクエーサーをカタログ化する予定とされており、宇宙論や天体物理学の研究に貢献することが期待されています。

※…記事中の距離は天体が発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています(参考:遠い天体の距離について|国立天文台)

 

関連:暗黒物質が作り出した宇宙の構造を再現、国立天文台のスーパーコンピューターが活躍

Image Credit: D. Schlegel/Berkeley Lab using data from DESI
Acknowledgment: M. Zamani (NSF's NOIRLab)
Source: NOIRLab
文/松村武宏

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