皆さん、レナード彗星「C/2021 A1 (Leonard)」はご覧になりましたか?
今回はAPOD(Astronomy Picture of the Day)に掲載された画像を追いながら、レナード彗星の「尾」を追っかけてみました。
まず、冒頭の画像は、レナード彗星を撮影するはずだったのですが、彗星の真下を火球と呼べるほどの明るい流星が通り抜けました。しかも、その閃光は彗星のコマよりもさらにグリーンに輝いていたのです。
その原因は、流星の小石サイズの核から蒸発したマグネシウムによるものと思われます。この流星は、最初の頃のふたご座流星群だったようです。右上に小さく写っているのが本物のレナード彗星です。尾は、まだあまり長くありません。
この思いがけない宙の光景は、2021年12月10日にカリフォルニア州のサクラメント川とラッセン山の上空で撮影されました。
レナード彗星は12月12日に地球、18日に金星に最接近し、その後、太陽へと向かって行きました。
こちらの画像はちょうどその頃、12月21日にナミビアで撮影されました。シャープな画像は、彗星のグリーンっぽいコマとイオンテイルの様子を見事に捉えています。
さらにレナード彗星は、年明け1月3日の太陽最接近(近日点)に向けて尾が伸びていきます。
12月29日にアタカマ砂漠で撮影されたこちらの画像では、彗星の核で発生したフレアと磁場や太陽風によって、尾が不規則にねじれたような形状になっているのがわかります。
広角レンズで撮影した画像を重ねて(右側はコントラストのために白黒反転表示された画像)、複雑なイオンテイルをなんと60度もトレースし、右下の地平線付近には明るい木星の輝きも捉えています。
レナード彗星の尾はさらに長く伸びて、「彗星の尾ってこんなに長かったっけ?」と思わせる画像がこちらです。12月末にスペインのカナリア諸島にあるラ・パルマ島から撮影されました。画像のほぼ中央に見える明るい星はフォーマルハウト(みなみのうお座α星)です。
彗星は2種類の尾、「ダストテイル」(塵の尾)と「イオンテイル」(イオンの尾)を持っています。イオンテイルは、コマの中のイオン化したガスが、太陽風によって外側に押し出されたもので、太陽とは反対の方向に伸びていきます。この太陽風の変化と、彗星の核から噴出するさまざまなガスの効果で、尾は複雑な構造になっていて、時間とともに変化していきます。
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こちら画像は、2022年の年明け1月2日にオーストラリアのサイディング・スプリング天文台(Siding Spring Observatory)から撮影されたものです。その後、レナード彗星は太陽をまわって、太陽系外へと去って行くことになります。
レナード彗星の軌道は双曲線のため、太陽に近づくのは一度きりで二度と戻ってきません。このような彗星は「非周期彗星」と呼ばれています。
あなたがもし、自分の目でレナード彗星の姿を見る幸運に恵まれたとしたら、それはたった一度の幸運だったことになります。APODで紹介された画像もレナード彗星の見納めの姿ということになるでしょう。
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Image Credit: Cory Poole、Rolando Ligustri (CARA Project, CAST) and Lukas Demetz、Daniele Gasparri、Jan Hattenbach、Blake Estes (itelescope.net)
Source: APOD(1) (2) (3) (4) (5)
文/吉田哲郎