NASAは1月10日、ダートマス大学の研究者ジャック・パーカーさんなどが率いる研究チームが、NASAが運用するチャンドラX線観測衛星の観測データを使って、矮小銀河Mrk462の中に太陽質量の20万倍ほどの超大質量ブラックホールを発見したと発表しました。これは、超大質量ブラックホールとしては軽量級だといいます。
研究チームは、今回の発見は、銀河の中心にある超大質量ブラックホールの形成の謎を解く手がかりになると述べています。
矮小銀河は数十億個以下の恒星でできている小さな銀河です。Mrk462はこのような矮小銀河の1つで、今回発見された軽量級の超大質量ブラックホールはこのMrk462の中にチリやガスに埋もれた状態で発見されました。
超大質量ブラックホールの周辺は、呑み込まれるガスやチリが非常に高温になるために、強烈なX線を放っていますが、X線は、透過力が高く、ガスやチリを突っ切って、その外に出てきます。研究チームは、このX線をチャンドラX線観測衛星を使って観測し今回の発見につなげました。これまで矮小銀河でガスやチリに埋もれた超大質量ブラックホールはほとんどみつかっていません。
そして、研究チームによれば、今回の発見は、これまで謎とされてきた超大質量ブラックホール形成の謎を解く手がかりになるといいます。
これまでの研究からは、宇宙が誕生してから10億年未満で、太陽質量の10億倍にも達する超大質量ブラックホールが形成されたことが示されています。
では、どのようにして、このような短期間に大量質量の10億倍という超大質量ブラックホールが形成されたのでしょうか?
ある考え方によれば、最も初期の宇宙に存在していた巨星が、崩壊してできた大量質量の100倍ほどのブラックホールが、降着や合体によって成長したといいます。また、別の考え方によれば、巨大なガスやチリの雲(gigantic clouds of gas and dust.)が、恒星の段階を経ることなく、直接崩壊して、太陽質量の数万倍のブラックホールが形成されたといいます。
研究グループによれば、矮小銀河の多数派が、軽量級とはいえ、Mrk462のように超大質量ブラックホールを持っているのであれば、前者の考え方に有利になり、逆に、矮小銀河の少数派しか超大質量ブラックホールを持っていないのであれば、後者の考え方に有利になると言います。これは、恒星質量ブラックホールは、各銀河に普通に存在することが期待できますが、巨大なガスやチリの雲が直接崩壊して太陽質量の数万倍のブラックホールが形成されるための条件が整うことは稀だと考えられるためです。
ジャックさんは「(1つの例だけで決めつけることはできないので)矮小銀河においてガスやチリに埋もれた超大質量ブラックホールをもっと広範囲に探していく必要があります」とコメントしています。
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/Dartmouth Coll./J. Parker & R. Hickox; Optical/IR: Pan-STARRS
Source: NASA/チャンドラX線観測衛星
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)