NASAは2月10日、コロンビア大学の天体物理学者カヤ・モリさん率いる研究チームが、NASAのX線天文衛星NuSTARを使って、木星からこれまでにない高エネルギーX線が放射されていることを確認したと発表しました。太陽系にある地球以外の惑星からこのような高エネルギーX線が観測されたのはこれが初めてだそうです。
木星にもオーロラがあります。木星のオーロラは、衛星イオの火山が噴き出す火山ガスに由来する荷電粒子が、磁場によって、加速されながら、南極と北極に集められ、大気と衝突することで発生します。今回観測された高エネルギーX線はこの木星のオーロラから放射されたものです。
これまでも、NASAのチャンドラX線観測衛星やESAのXMM-NewtonX線観測衛星などによって、木星のオーロラからくる低エネルギーX線(low-energy X-rays)は観測されてきました。しかし、今回観測されたような高エネルギーX線(high-energy X-rays)は観測されていませんでした。
しかし、木星は強大な磁場を持ち、しかも、非常に高速で自転しています。そのため、その磁気圏は、あたかも巨大な粒子加速器のようなもので、そのオーロラからは、高エネルギーX線が放射されているのではないか、と予測されてはいましたが、NuSTARによってついにその観測に成功したというわけです。
実はNASAなどの太陽探査機ユリシーズも、1992年に木星でスイングバイをした際に、高エネルギーX線の観測に挑戦しましたが、成功しませんでした。研究チームによれば、これは想定されたX線の発生メカニズムと実際のX線の発生メカニズムが異なっていたためだといいます。X線が発生するメカニズムにはいくつかありますが、それぞれ放射されるX線の特徴は異なっています。そのため、ユリシーズに搭載されていた観測装置の感度などでは観測することができなかったというわけです。
ちなみに、木星のオーロラから放射される高エネルギーX線は高エネルギー電子(マイナスの電荷を帯びています)が原子核(プラスの電荷を帯びています)に引っ張られて減速するときに放射されるX線です。これを制動放射(bremsstrahlung)といいます。
そして、このような木星の磁場について研究することで、マグネター、中性子星など強い磁場を持つ謎の天体の謎の解明に迫ることができると考えられています。
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Image Credit: Enhanced image by Kevin M. Gill (CC-BY) based on images provided courtesy of NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/NASA/JPL-Caltech NASA - NASA Telescope Spots Highest-Energy Light Ever Detected From Jupiter文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)