こちらは南天の「かじき座」の方向およそ7000万光年先にある渦巻銀河「NGC 1566」です。NGC 1566は「渦巻銀河」と「棒渦巻銀河」の中間にあたる形態を持つ銀河(intermediate spiral galaxy)に分類されています。
NGC 1566は少なくとも46個の銀河からなる「かじき座銀河群」で最も明るく、同銀河群を構成する主要な銀河のひとつです。中心から激しく渦巻くように2本の渦巻腕を力強く伸ばしているNGC 1566は、海外では「Spanish Dancer」(スペインのダンサー)の愛称でも知られており、渦巻腕がはっきりと目立つ「グランドデザイン渦巻銀河」(grand design spiral galaxy)のひとつにも数えられています。
画像を公開した米国科学財団の国立光学・赤外天文学研究所(NSF/NOIRLab)によると、NGC 1566は狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)を中心部分に持つことが知られており、NGC 1566自身は活動銀河の一種であるセイファート1型に分類されています。
NGC 1566の力強い渦巻腕を彩る青色は、表面温度が高い若くて明るい星々の輝き。その渦巻腕のあちこちに見える暗い部分は塵が豊富なダストレーン(ダークレーン)と呼ばれるもので、ガスや塵が豊富な渦巻腕には新たな星を生み出す星形成領域が形成されています。
いっぽう、渦巻腕よりも赤みがかった中心部分に集まっているのは、表面温度が低い古い星々。また、NGC 1566では2010年に超新星「SN 2010el」も検出されています。NOIRLabはNGC 1566について、恒星進化のあらゆる段階の星々の住まいだと表現しています。
なお、NGC 1566は近くにある18個の銀河とともに、次世代宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」の観測対象となっています。この観測はジェミニ天文台の主任科学者を務める天文学者のJanice Leeさんによるもので、近傍宇宙に存在する銀河の星形成領域を調査する観測プロジェクト「PHANGS」の一環として実施されるとのことです。
冒頭の画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データから作成されたもので、NOIRLabから2022年2月22日付で公開されています。
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Source
Image Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab) NOIRLab - Spanish Dancer Galaxy Twirls into View from NSF’s NOIRLab in Chile文/松村武宏