こちらは、2013年7月19日に土星探査機「Cassini(カッシーニ)」の広角カメラで撮影された画像の一つです。カッシーニはこの時、土星の影に入っていました。画像左上には土星の暗い夜側が、その右側には壮大な環の一部が写っています。画像下側で淡く青白い光を放っているのは幅が広いE環です。
背景に見える星々の一つ、画像の中央右側に青い光点が写っているのがわかりますでしょうか。これは、カッシーニから遠く離れた地球の輝きです。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、光点の右側に飛び出たかすかな突起として月も写っているといいます。
狭角カメラを使って同時撮影された画像では、地球と月がはっきりと分離して捉えられています。NASAによれば、撮影時のカッシーニと地球は約14億4585万8000km離れていました。
よく「宇宙からは国境が見えない」と言いますが、カッシーニが撮影した地球は大陸の形を判別することもできないほど小さな天体として写っています。80億人近い人類と私たちが知るすべての生命が、この惑星に息づいているのです。
宇宙はこのような息を呑む光景を眺めることができる場所ですが、宇宙からは恐るべき脅威が地球にもたらされることもあります。
画像撮影から5か月ほど前の2013年2月には地球の大気圏に突入した小天体(推定直径約10m)がロシアのチェリャビンスク州上空で爆発し、発生したエアバースト(強力な爆風)によって約1600名の負傷者や建物の被害がもたらされました。また、100年以上前の1908年6月には「ツングースカ大爆発」と呼ばれる天体衝突(天体の推定直径50~80m)がシベリアで発生しています。
つい最近では、2022年1月に発見された小惑星「2022 AE1」が2023年7月に地球へ衝突する可能性が懸念されました。追跡観測の結果その可能性は否定されましたが、2022 AE1は直径70mと推定されており、ツングースカ大爆発規模の天体衝突を起こし得る未発見の小惑星がまだまだあることを実感させます。
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今の人類は地球に接近する小惑星を捜索・追跡することしかできませんが、衝突リスクの高い小惑星に衝突体(インパクター)をぶつけて積極的に軌道を変更する「キネティックインパクト」(kinetic impact)と呼ばれる手法を初めて実証するためのミッションが現在進められています。
「惑星防衛」(プラネタリーディフェンス※)の一環として2021年11月に打ち上げられたNASAの「DART」(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験)ミッションの探査機は、2022年9月~10月に小惑星「ディディモス」の衛星「ディモルフォス」に衝突し、その軌道を実際に変更することを試みます。
※…深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、いずれは小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組み
関連
・小惑星に体当りする探査機「DART」打ち上げ準備進む
・NASA探査機衝突後の小惑星を観測するESAのミッション「Hera」
天体衝突に限らず、地震・噴火・水害といった天災はいつかどこかで必ず発生します。今日まで様々な災害に直面してきた人類が手にする「力」が、真の脅威から命を守るために用いられることを切に願います。冒頭の画像は、NASAがTwitter公式アカウントを通して2022年2月27日付で紹介しています。
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In 2013, the Cassini spacecraft captured this wide-angle view of Saturn and a chunk of its rings. That pale blue dot just below the rings? That’s Earth from about 898 million miles (1.4 billion kilometers) away. Explore @NASASolarSystem: https://t.co/9sLPATJHaE pic.twitter.com/NlTxVXRANR
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Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI NASA/JPL - PIA17170: One Special Day in the Life of Planet Earth -- Close-Up NASA/JPL - PIA17171: The Day the Earth Smiled: Sneak Preview NASA/JPL - PIA17172: The Day the Earth Smiled文/松村武宏