大分県と兼松株式会社は2月26日、アメリカの民間宇宙企業シエラ・スペース社が開発中の有翼宇宙往還機「Dream Chaser(ドリーム・チェイサー)」のアジア拠点として大分空港の活用を検討するパートナーシップを、シエラ・スペースとの3者で締結したことを発表しました。今回の締結は、大分で開催されていた「第33回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)」期間中に行われました。
シエラ・スペースは国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給を実施する商業補給サービス「CRS-2」をアメリカ航空宇宙局(NASA)との間で契約しており、そのための補給船としてドリームチェイサーの開発を進めています。
CRS-2では「カーゴドラゴン」を運用するスペースX、「シグナス」を運用するノースロップ・グラマンもNASAと契約を交わしています。ドリームチェイサーはこの中でも唯一の有翼型宇宙船で、2011年に引退したスペースシャトルのように地球帰還時には滑走路へ着陸します。海外メディアのSpaceNewsによると、ドリームチェイサーは2023年前半の初飛行が予定されており、打ち上げにはアメリカの民間宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)が開発中の新型ロケット「ヴァルカン」が用いられるということです。
なお、シエラ・スペースはブルー・オリジン社などと共同で商業宇宙ステーション「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」の開発にも携わっています。
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大分県は2020年にもヴァージン・オービットとの間で、大分空港を拠点とした人工衛星打ち上げに関するパートナーシップを締結しています。ヴァージン・オービットは空中発射型のロケット「Launcher One(ランチャー・ワン)」を運用しており、ボーイング747-400を改修した同社の空中発射母機「コズミックガール(Cosmic Girl)」は一般的な航空機と同じように滑走路を使って離着陸します。
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今回のシエラ・スペースとのパートナーシップ締結に関する発表によると、大分県は大分空港が人工衛星の打ち上げ拠点だけでなく、宇宙ステーションと地球をつなぐドリームチェイサーのアジアにおける着陸拠点になることを目指しており、今後は兼松株式会社とともに安全面や環境面の検証、経済波及効果など具体的な検証を行うとしています。
3者のパートナーシップ締結を受けて、大分県の広瀬勝貞県知事は「世界最先端の宇宙企業であるシエラ・スペースとお互いのビジョンを共有できたこと、また本県の産業集積や観光資源等のポテンシャルが評価されたことを大変うれしく思っています」「この提携が、教育やビジネスなど幅広い分野で、大分の子供達や企業が刺激を受けるきっかけとなることを期待しています」とコメント。
シエラスペースCEOのTom Vice氏は「大分空港がドリームチェイサーの着陸拠点となることと、それにより、地球への帰還ミッションにおいて、我々が拡大を目指すグローバルな着陸拠点ネットワークの一つとして日本に着陸できる日を心待ちにしています」とコメントしています。
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Image Credit: Sierra Space/NASA 大分県 - 大分県× Sierra Space ×兼松 宇宙往還機Dream Chaser®の活用検討に向けたパートナーシップを締結 ~大分空港をアジアの宇宙拠点へ~ 兼松株式会社 - 大分県 × Sierra Space ×兼松 宇宙往還機Dream Chaser®の活用検討に向けたパートナーシップを締結 ~大分空港をアジアの宇宙拠点へ~ SpaceNews - Sierra Space to study Dream Chaser landings in Japan文/出口隼詩