こちらは南天の「ちょうこくしつ座」の方向約5億光年先にある銀河「車輪銀河(Cartwheel galaxy)」です。車輪銀河はその名が示すように、中心部分を大きく取り囲むリング構造を持つ印象的な姿をしています。
直径約15万光年のリング構造は、小さな渦巻銀河が正面から衝突・通過したことで形成されたとみられています。画像を公開したヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、私たちは衝突から数百万年後の様子を観測していると考えられています。
青い星々の輝きに彩られたリング構造の左下の部分に注目すると、他の部分よりも明るい光点が写っているのがわかります。これは2021年11月に発見された超新星「SN2021afdx」の光です。冒頭の画像は2021年12月に撮影されたものですが、2014年8月に撮影された同銀河の画像と比較すると、超新星の位置がよくわかります。
ESOによると、この超新星は大質量星が起こす「II型超新星」でした。II型超新星は大質量星のコアが崩壊した反動で恒星の外層が吹き飛ぶと考えられている現象で、「コア崩壊型」あるいは「重力崩壊型」の超新星とも呼ばれています。
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超新星が起きると、恒星内部の核融合反応で生成された炭素や酸素といった元素が周囲に放出されます。放出された元素は新たな恒星や惑星の材料になるだけでなく、場合によっては生命を形作る材料にもなります。人間をはじめとした地球で息づく生命も皆、星屑から生まれたと言えるのです。
冒頭の画像はチリのラ・シヤ天文台にあるESOの「新技術望遠鏡」(NTT:New Technology Telescope、口径3.58m)によって撮影されたもので、ESOの今週の一枚として2022年3月7日付で公開されています。
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Image Credit: ESO/Inserra et al. ESO - Something new in the sky文/松村武宏