宇宙にはさまざまな連星系が存在しています。
その一つに「共生星」と呼ばれる特異な天体があります。これは低温で巨大な赤色巨星と高温でコンパクトな白色矮星からなる近接連星系です。「近接」とは、2つの恒星がお互いに影響を及ぼすくらいに接近しているという意味です。
その共生星の代表格とも言えるのが「みずがめ座R星」。距離は1255光年(※)と宇宙的な尺度では比較的近くに存在し、天体を取り囲む砂時計のような形をした星雲のフィラメント構造が興味深いことから、盛んに研究が行われています。画像の青い部分が0.3-0.7キロ電子ボルトのX線放射、緑と赤の部分が可視光による放射を表しています。
この天体の初期の観測では、X線放射は星雲の中心部に集中しており、またジェット状の構造に沿った物質の塊も見つかっていましたが、メキシコ国立自治大学モレリア校(National Autonomous University of Mexico, Morelia Campus)のJesús Toalá氏を中心とする研究チームによって、XMM-Newton衛星による過去の観測結果を新たに解析したところ、星雲に付随するX線放射が拡大していることが初めて明らかになりました。
これは、銀河の中心にある超巨大ブラックホールによって吹き出された高温のガスの泡と同じような現象であると考えられています。
この研究論文は2022年3月8日付けで、アメリカ天文学会発行の「アストロフィジカルジャーナルレターズ」に公開されました。また、冒頭の画像は4月4日付けでAAS Novaで「注目の画像」として紹介されました。
なお、みずがめ座R星までの距離はウィキペディアなどでは推定710光年とされていますが、本記事の引用元である論文によると、ガイア衛星の測定から385±60パーセク(1255±195光年)としていて、記事の中でも1255光年としています。
「みずがめ座R星」多波長観測で捉えられた性質や構造 (2022) 約250年前に見られたであろう爆発の痕跡を持つ「みずがめ座R星」 (2020)
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Image Credit: Toalá et al. AAS Nova - Featured Image: Symbiotic Star’s Nebula Shines in X-rays IOPSCIENCE - An XMM-Newton EPIC X-Ray View of the Symbiotic Star R Aquarii文/吉田哲郎