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“宇宙人探し”の新たな一歩。SETI研究所が米国の電波干渉計にデータ取得用機器を設置

sorae.jp 2022年4月9日 21時15分

【▲ アメリカ国立電波天文台の「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」(Credit: Alex Savello)】

米国のSETI研究所は現地時間4月4日、米国ニューメキシコ州にある「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA:Very Large Array)」を構成するアンテナすべてに対して、観測データのコピーを取得するためのハードウェア(光ファイバー増幅器とスプリッター)が設置されたことを明らかにしました。このハードウェアは、地球外知的生命体の技術的兆候(テクノシグネチャー)を捜索するために用いられることになります。

VLAは口径25mのアンテナ27基で構成されている「電波干渉計」です。電波干渉計とは、複数のアンテナを組み合わせることで、単一の巨大なアンテナを用いるのと同じように高い解像度や感度で天体を観測できる設備のこと。VLAの場合、口径130mの単一アンテナに相当する性能を持つといいます。SETI研究所によるとVLAが観測に用いる周波数は主に1~50GHzで、一部のアンテナは1GHzよりも低い54MHzまでの周波数帯域にも対応しています。

VLAを運用するアメリカ国立電波天文台(NRAO)とSETI研究所は、2020年2月に地球外知的生命体探査(SETI:search for extraterrestrial intelligence)に関する協力体制の構築に合意しており、VLAが取得した観測データを処理するSETI専用のシステム「COSMIC(※)」の開発を共同で進めることが発表されていました。COSMICは2023年初頭の科学運用開始を目指して準備が進められています。

※…Commensal Open-Source Multimode Interferometer Cluster(直訳すれば「片利共生型オープンソースマルチモード干渉計クラスター」)の略

関連:”宇宙人を探して”集められた観測データ「ブレイクスルー・リッスン」公開

COSMICの特徴は、一言で簡単に表せば“相乗り”です。COSMICを用いた地球外知的生命体探査では、VLAのアンテナを専有してデータを取得することはありません。SETI研究所によると、COSMICは天文学者が取得した観測データから独立したコピーを作成して分析することで、地球外知的生命体の技術的兆候をリアルタイムで捜索できるといいます。

つまり、COSMICは自ら観測対象を定めてデータを得ることはできないものの、代わりに天文学者たちの観測に相乗りすることで、地球外文明の捜索に使えるデータを一年中得られるというわけです。有望そうな星に狙いを定められないのはデメリットのように思えますが、SETI研究所の上級研究員である天文学者のSeth Shostakさんは、地球外文明の位置や使用されている電波の周波数が推測の域を出ない以上、小さな懸念にすぎないと語っています。

SETI研究所によれば、現在はデータの分析に用いられるGPU用コードの開発が進められているといいます。COSMICは運用開始から2年間で約4000万個の星系を観測すると予測されており、北半球における最も包括的な地球外知的生命体探査プログラムになると期待されています。

ちなみに最近では、オーストラリアのパークス天文台にある電波望遠鏡が、約4.2光年先にある太陽系最寄りの恒星「プロキシマ・ケンタウリ」の方向から自然現象ではない可能性がある電波信号を2019年に受信していたことが話題になりました。その後の詳しい分析の結果、この信号は人類の活動に由来する電波干渉だった可能性が高いと判断されています。

関連:人類由来だった可能性大。“宇宙人探し”プロジェクトで見つかった信号の分析結果が発表される

また、2020年6月には、天の川銀河に高度な文明が36以上存在するかもしれないと試算した研究成果が発表されています。この研究では最もゆるい条件(高度な文明の数およそ928以上)でも地球外文明の信号を受信するまでに10世紀以上かかると予測されています。果たして人類が地球外文明の技術的兆候を捉える日はやって来るのでしょうか。

 

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Source

Image Credit: Alex Savello SETI Institute - COSMIC: All Antennas at the Very Large Array Ready to Stream Data for Technosignature Research SETI Institute - SETI Institute and National Radio Astronomy Observatory Team Up for SETI Science at the Very Large Array SETI Institute - Using the VLA for SETI (written by Seth Shostak) NRAO - Prototype SETI Hardware Gets First Data From VLA NRAO - NRAO, SETI Institute Agree on New Research Programs

文/松村武宏

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