ハッブル宇宙望遠鏡の天文学者チームは、2つの「ウルトラホットジュピター」の奇妙な気象現象について新たな論文を発表しました。
「ホットジュピター」とは系外惑星の一種で、木星のような巨大なガス惑星が主星の恒星を10日以内で公転(つまり主星から非常に近い軌道を公転)しているため、表面が過熱され高温になっているものを指します。その中でも特に高温のものは「ウルトラホットジュピター」と呼ばれています。
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4月7日付けでNatureに掲載されたのが、約1300光年の距離にある「WASP-178b」。昼側の大気には雲がなく、一酸化ケイ素のガスに富んでいます。この惑星の片側は常に恒星に面しているため、灼熱の大気が時速2000マイル(時速3200キロメートル)を超える超ハリケーン級の速度で夜側に回り込みます。夜側では、一酸化ケイ素が雲から雨のように降り注ぎ、岩石に凝縮するほど冷えますが、夜明けや夕暮れ時でも、岩石を蒸発(気化)させるほど高温だと言うことです。
一方、1月24日発行の「Astrophysical Journal Letters」で報告されたのが、約400光年の距離にある「KELT-20b」。この惑星では、主星からの紫外線の爆発によって、地球の成層圏のような熱層が大気中に形成されています。地球では、大気中のオゾンが紫外線を吸収し、地表から7〜31マイル(11~50キロメートル)上空で気温を上昇させます。KELT-20bでは、主星からの紫外線が大気中の金属を加熱し、非常に強力な熱逆転層を形成しているのです。
ハッブル宇宙望遠鏡の近赤外線観測で水が検出されたことと、スピッツァー宇宙望遠鏡で一酸化炭素が検出されたことが証拠になったと言うことです。これらは、逆転層が作り出す高温で透明な上層大気を通して放射されていて、太陽のような比較的温度の低い主星を周回するホットジュピターの大気とは異なる特徴だとのこと。
論文の著者の一人であるメリーランド大学カレッジパーク校(the University of Maryland, College Park)のGuangwei Fu氏は「KELT-20b の発光スペクトルは、他のホットジュピターとはかなり異なっています」と語っています。「これは、惑星が孤立して生きているのではなく、主星の影響を受けているという説得力のある証拠なのです」
この研究は、単に奇妙で風変わりな惑星の大気を見つけるということにとどまりません。このような「異常気象」の研究は、銀河系から遠く離れた惑星で起こっている多様で複雑な現象や、エキゾチックな化学反応について、天文学者がより深く理解することを可能にします。
さらに、ホットジュピターに人が住むことはできませんが、人が住める可能性のある地球型惑星の大気をよりよく理解するための道を開くのに役立つとのこと。
そうだとすると、ホットジュピターの「異常気象」研究は、現在の地球の異常気象の理解にも役立つかもしれませんね。
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Image Credit:NASA, ESA, Leah Hustak (STScI) NASA - Hubble Probes Extreme Weather on Ultra-Hot Jupiters Nature - UV absorption by silicate cloud precursors in ultra-hot Jupiter WASP-178b Astrophysical Journal Letters - Strong H2O and CO Emission Features in the Spectrum of KELT-20b Driven by Stellar UV Irradiation文/吉田哲郎