こちらは南天の「かじき座」の方向にある散開星団「R136」です。その後ろに見えているのは「かじき座30(30 Doradus)」と呼ばれる輝線星雲。無数に散りばめられた星団の青い星々と、背後に広がる星雲のコントラストが美しい一枚です。
「ハッブル」宇宙望遠鏡が捉えたこの星団、実は地球から約17万光年離れた「大マゼラン雲」(LMC:Large Magellanic Cloud、大マゼラン銀河とも)にあります。背後の星雲「かじき座30」も、「タランチュラ星雲(Tarantula Nebula)」という名前のほうがよく知られているのではないでしょうか。
タランチュラ星雲は活発な星形成領域として知られています。その中心付近で誕生したR136の星々はまだ若く、形成されてから150万年ほどしか経っていないとみられています。星団には質量が太陽の100倍以上という大質量星が幾つか含まれていて、最も重いとされる「R136a1」の質量は太陽の約220倍もあると考えられています。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データ(紫外線・可視光線・赤外線のフィルター計5種類を使用)をもとに作成され、2012年8月16日付で公開されたもので、アメリカ航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡Twitter公式アカウントが2022年4月19日付で改めて紹介しています。
The Tarantula Nebula is a huge star-forming region located 170,000 light-years from Earth.
The collection of stars in the core of the nebula, shown in this #HubbleClassic image, is made up of two star clusters that differ in age by about a million years: https://t.co/tHpdl3Cu2p pic.twitter.com/wKYM3ALaIf
関連:大質量星誕生の実験室。大マゼラン雲に輝く「星のゆりかご」
Source
Image Credit: NASA, ESA, and E. Sabbi (ESA/STScI); Acknowledgment: R. O'Connell (University of Virginia) and the Wide Field Camera 3 Science Oversight Committee STScI - Hubble Watches Star Clusters on a Collision Course @NASAHubble (Twitter) Crowther et al. - The R136 star cluster dissected with Hubble Space Telescope/STIS. I. Far-ultraviolet spectroscopic census and the origin of HeII 1640 in young star clusters (arXiv) Bestenlehner - Mass loss and the Eddington parameter: a new mass-loss recipe for hot and massive stars (arXiv)文/松村武宏