ダラム大学の天文学者Simone Scaringiさんを筆頭とする研究グループは、白色矮星と恒星の連星系で起こる新たなタイプの爆発現象が見つかったとする研究成果を発表しました。この現象は研究グループによって「Micronova(マイクロノバ)」と命名されています。
■爆発のエネルギーは新星爆発の100万分の1白色矮星とは、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が進化した天体です。軽い恒星はその晩年に赤色巨星へ進化すると、外層から周囲の宇宙空間へとガスや塵を放出するようになります。最後には熱い中心核だけが残って、白色矮星になると考えられています。
太陽は単独の恒星ですが、この宇宙には2つ以上の恒星からなる連星も数多く存在しています。連星をなす恒星の片方が寿命を迎えて白色矮星になると、白色矮星と恒星からなる連星が誕生することになります。
このような連星では、時として激しい爆発現象が起こります。恒星から流れ出た水素ガスが白色矮星に降り積もり、暴走的な熱核反応を起こして表層が吹き飛ぶ現象は「新星」(古典新星、Nova)と呼ばれています。また、ガスが降り積もり続けて白色矮星の質量が太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に達することで、「超新星」(Supernova)の一種である「Ia型超新星」が起こることもあります。
研究グループによって今回発見された「マイクロノバ」は、爆発のエネルギーが新星の約100万分の1とされる現象です。研究に参加したアムステルダム大学の天文学者Nathalie Degenaarさんによると、新星爆発は数週間に渡って白色矮星を明るく輝かせるに対し、マイクロノバが持続するのは数時間程度。新星では白色矮星の表面全体で水素の核融合反応が起こるものの、マイクロノバでは強い磁場に沿って水素ガスが流れ込む磁極付近の表面だけで反応が起こると考えられています。
【▲ マイクロノバが発生する様子を示した動画】
(Credit: ESO/M. Kornmesser, L. Calçada)
マイクロノバはアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS(テス)」の観測データから見つかりました。TESSの観測データを調べていた研究グループは、閃光が数時間続く「普通ではない何か」(Degenaarさん)を発見。調査を続けたところ、同様の現象が合計3件見つかりました。チリのパラナル天文台にあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」による追加観測の結果も合わせると、3件の現象はすべて白色矮星で起きていたことがわかったといいます。
見つかったのは今回が初めてですが、実際のところマイクロノバは一般的な現象かもしれないとScaringiさんは指摘します。ただ、マイクロノバは数時間という短い期間しか続かないため、検出するのは難しいともScaringiさんは語っています。大規模なサーベイ観測と迅速な追跡観測が求められるものの、研究グループはより多くのマイクロノバを捉えたいと考えているとのことです。
関連:一部の白色矮星では表層で水素の安定した核融合反応が起きている可能性
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Image Credit: ESO/M. Kornmesser, L. Calçada, Mark Garlick (http://www.markgarlick.com/) ESO - Astronomers discover micronovae, a new kind of stellar explosion Scaringi et al. - Localized thermonuclear bursts from accreting magnetic white dwarfs文/松村武宏