こちらは南天の「とけい座」の方向約6000万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 1512」の姿。チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」によって撮影されました。右下にはレンズ状銀河「NGC 1510」の小さな姿も写っています。
NGC 1512とNGC 1510は、重力を介して互いに影響を及ぼし合っている相互作用銀河です。画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、両銀河の重力相互作用は4億年に渡って続いており、銀河の形を歪めるとともに星形成活動を刺激したといいます。銀河どうしの相互作用は星形成活動を活性化して、スターバースト(大質量の恒星が短期間に数多く誕生する現象)を引き起こすこともあると考えられています。
また、DECamは大きいほうの銀河NGC 1512の複雑な内部構造や、外側から伸びた巻きひげのような構造を明らかにしました。巻きひげを形作る星々の流れの一部は、小さいほうの銀河NGC 1510を包み込んでいるかのように見えています。NOIRLabが「銀河のバレエ」と表現する相互作用を経て両銀河は最終的に合体し、1つの銀河になると予想されています。
ちなみに、この画像には回折スパイク(針のような光)をともなう天の川銀河の星々や、主役である2つの銀河よりもさらに遠方にある数え切れないほどの銀河も捉えられています。宇宙の果てしない広がりと銀河の進化を左右するダイナミックな相互作用を同時に感じ取れる一枚です。
撮影に用いられたダークエネルギーカメラ(DECam)は、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できる巨大なデジタルカメラ(画素数約520メガピクセル)のような装置で、2013年から2019年にかけてダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的とした観測が実施されました。冒頭の画像はNOIRLabから2022年5月3日付で公開されています。
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Source
Image Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab) NOIRLab - Galactic Ballet Captured from NSF’s NOIRLab in Chile文/松村武宏