アメリカ航空宇宙局(NASA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)は、成層圏赤外線天文台「SOFIA」の運用を2022年9月30日で終了すると発表しました。
SOFIAはボーイング747-SPに改修を施した“空飛ぶ天文台”です。機体後部には口径2.7mの反射望遠鏡が搭載されていて、地上と比べて大気に妨げられにくい高度1万2000~1万3000m前後の成層圏から赤外線の波長で天体の観測を行うことができます。
1996年に始まったSOFIAの開発では、NASAが機体の調達と改造を、DLRが望遠鏡を担当。2010年にファーストライトを達成したSOFIAは、2014年から始まった5年間のプライムミッションと3年間の延長ミッションで毎年約100回、8年間で合計約800回飛行し、主に天の川銀河の天体を対象とした観測を実施してきました。宇宙で最初に形成された分子イオンとされる水素化ヘリウムイオン(HeH+)の現在の宇宙空間における初検出(2019年成果発表)、月面の太陽光が当たる領域における水分子の初検出(2020年成果発表)といった成果にSOFIAは貢献しています。
NASAとDLRによると、全米アカデミーズが2021年10月に発表した報告書「Pathways to Discovery in Astronomy and Astrophysics for the 2020s (2021)」にて、SOFIAの科学的成果は運用コストに見合うものではないと評価されたとのこと。両機関はこの勧告を受け入れ、SOFIAの運用を終えることになりました。
なお、NASA科学ミッション本部副本部長のThomas Zurbuchenさんは、SOFIAの運用終了後もアメリカとドイツの協力体制を維持する意向を示しており、2022年夏に開催される合同ワークショップではNASAとDLRによる科学分野での新たなプロジェクトに取り組みたいと語っています。
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Image Credit: NASA/Jim Ross NASA - NASA, Partner Decide to Conclude SOFIA Mission DLR - The airborne observatory SOFIA to end its mission after eight years of operations文/松村武宏