日本時間2022年5月16日には皆既月食がありました。日本は昼間だったので見ることはできませんでしたが、夜間だった北米・南米などでは多くの人々が地球の影に覆われた月を観望しました。
冒頭の画像はチリのパラナル天文台で撮影された皆既月食です。皆既月食は月が地球の本影に入る現象ですが、影に入った月は真っ暗になってしまうのではなく、地球の大気で屈折した太陽光によって照らされます。大気を通過した太陽光は青い光が散乱して赤い光が残るため、月はこのように赤銅色に輝きます。
いっぽう、こちらの画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台で撮影された皆既月食中の夜空です。画像の中央付近、見事な天の川の近くに赤銅色の月が小さく写っています。同天文台は南半球にあるため、画像の右下には大マゼラン雲と小マゼラン雲も見えています。
また、今回の月食は宇宙からも撮影されました。次の画像は国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している欧州宇宙機関(ESA)のサマンサ・クリストフォレッティ(Samantha Cristoforetti)宇宙飛行士が撮影した月食の様子です。地球の影に覆われた月が、ISSの太陽電池アレイと地球の縁に挟まれるようにして写っています。
最後に米国サウスウエスト研究所(SwRI)か公開している15秒の短い動画をご紹介しましょう。これはアメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「Lucy(ルーシー)」に搭載されている単色望遠カメラ「L'LORRI」を使って、地球から約1億km離れた場所から撮影された皆既月食です。
ルーシーの望遠カメラは、右側に小さく写っている月が、左側に写っている地球の影に入って見えなくなっていく様子を捉えています。もしも地球から遠く離れた場所で月食を観測したら、どのように見えるのか。そんな疑問に答えてくれる動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=0c3ak2_JVts
【▲ NASAの小惑星探査機ルーシーが撮影した2022年5月の皆既月食(動画)】
(Credit: NASA/Goddard/APL/SwRI)
この動画は、米国東部夏時間2022年5月15日21時40分から5月16日0時30分までの約3時間に渡って取得された86枚の画像を使って作られています(地球に比べると月は暗いため、月の明るさは6倍に調整されています)。ルーシーによる皆既月食の観測は月が地球の影に入ったところで終了したため、月が再び現れる様子は捉えられていません。なお、2021年10月に打ち上げられたルーシーは木星のトロヤ群小惑星を主な探査対象としており、2022年10月には軌道を変更するために1回目の地球スイングバイを行う予定です。
関連:NASA探査機「ルーシー」10月16日打ち上げ予定、木星トロヤ群小惑星に初接近
ちなみに、2022年11月8日(火)には日本全国で皆既月食を見ることができます。国立天文台によると、食の始まりは18時8分、食の最大(食分1.364)は19時59分、食の終わりは21時49分とのこと。天候次第ではありますが、半年後を楽しみに待ちたいと思います。
関連:赤銅色に輝く月。画像で振り返る2021年5月の皆既月食
Source
Image Credit: F. Aedo, F. Durán/ESO; CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/D. Munizaga; ESA-S.Cristoforetti; NASA/Goddard/APL/SwRI ESO - Full Moon turns red NOIRLab - Total Lunar Eclipse over Cerro Tololo ESA - Peek-a-boo Moon SwRI - SwRI-led Lucy Mission Observes a Total Lunar Eclipse NASA - NASA's Lucy Mission Observes a Lunar Eclipse文/松村武宏