こちらは土星探査機「カッシーニ」が今から10年前の2012年5月6日に撮影した土星の衛星タイタンです。カッシーニの撮像システム「ISS(Imaging Science Subsystem)」の狭角カメラを使って、タイタンから約77万km離れたところから撮影されました。背景が暗くないのは土星の本体が写っているからで、タイタンの後ろを左下から右上へと横切っている細い帯状のものは横から見た土星の輪です。
タイタンの大気は表面気圧が約1.5気圧、密度は地球の約4倍と濃く、大気中には「もや」が漂っています。この画像にはタイタンの輪郭を縁取る「もや」の層が写っている他に、「もや」の下に広がるタイタン表面の様子も捉えられています。正面に見えている暗い部分は「シャングリラ」と呼ばれている領域で、画像の中央すぐ左下の辺りには、カッシーニに搭載されていた着陸機「ホイヘンス」が2005年1月14日に着陸した地点があります。
また、カッシーニは冒頭の画像と同じタイミングで、広角カメラでもタイタンを撮影しています。次に掲載したのが広角カメラを使って撮影された、土星の手前に浮かぶタイタンの姿です。直径約5150kmのタイタンは直径約4879kmの水星よりも大きな衛星ですが、直径が約12万kmもある土星の前では、惑星並みのサイズがある天体とは思えないほど小さく感じられます。
冒頭の画像は天体画像を毎日1枚紹介している「Astronomy Picture of the Day」(APOD、アメリカ航空宇宙局とミシガン工科大学が運営)にて2022年5月27日付で紹介されています。
関連:全人類が暮らす点のような地球の姿。土星探査機カッシーニが14億km彼方から撮影
Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute APOD - Titan: Moon over Saturn NASA/JPL - PIA19642: A World All Its Own NASA/JPL - PIA14922: Colorful Colossuses and Changing Hues文/松村武宏