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太陽の高解像度画像 欧州の探査機「ソーラー・オービター」が撮影

sorae.jp 2022年6月3日 21時35分

【▲ 太陽探査機「ソーラー・オービター」の極端紫外線撮像装置(EUI)で撮影された太陽の南極(Credit: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team)】

こちらは、欧州宇宙機関(ESA)の太陽探査機「ソーラー・オービター(Solar Orbiter)」に搭載されている極端紫外線撮像装置「EUI(Extreme Ultraviolet Imager)」で撮影された太陽の南極です。ESAによると、明るい領域では磁力線がループ状に閉じていて(閉じた磁力線)、EUIは閉じ込められたプラズマから放出された紫外線を捉えています。いっぽう暗い領域では磁力線が閉じておらず、プラズマが宇宙空間へと流出して太陽風を作り出すことができます。

ソーラー・オービターは2022年3月26日、太陽に0.32天文単位(※)=約4800万kmまで接近して観測を行いました。水星の近日点距離が約0.31天文単位(遠日点距離は約0.47天文単位)なので、水星が太陽に一番近付く時と同じくらいまで太陽に接近・通過したことになります。ソーラー・オービターの耐熱シールドは、太陽最接近時の温度が摂氏約500度に達したといいます。

※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来

ESAによれば、「太陽望遠鏡」としてはこれまでになく太陽に接近したソーラー・オービターのEUIは、非常に詳細な太陽大気の画像を取得することに成功しました。冒頭の画像は最接近から4日後の3月30日に、ソーラー・オービターのEUIを使って波長17nmの極端紫外線で撮影されたものです。EUIは太陽コロナが表面よりも高温の摂氏100万度まで加熱されるプロセス(コロナ加熱問題)などを調べるために、太陽の彩層・遷移層・太陽コロナを撮影しています。なお、極端紫外線は人の目には見えないので、画像の色は擬似的に着色されたものとなります。

【▲ 太陽探査機「ソーラー・オービター」の極端紫外線撮像装置(EUI)で撮影された「ヘッジホッグ(ハリネズミ)」と呼ばれている構造(Credit: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team)】

この接近観測時に、ソーラー・オービターは研究者の興味を引く構造を捉えました。同じく3月30日にEUIを使って撮影されたこちらの画像、中央の下側に写っているのがその構造です。研究者から「hedgehog(ヘッジホッグ、ハリネズミ)」という愛称で呼ばれているこの構造では、高温と低温のガスがスパイク状に幾つも並んでいるといいます。

ヘッジホッグは比較的小規模な構造に分類されるものの、それでも直径は約2万5000km(地球の約2倍)もあります。太陽大気の中でどのようにして形成されたのかなど、ヘッジホッグについて正確なことはまだわかっていません。

今回の接近観測で得られた観測データの分析は、まだ始まったばかりです。EUIの主任研究員を務めるベルギー王立天文台のDavid Berghmansさんは「もしもソーラー・オービターが明日データの取得を止めたとしても、これらすべてを理解しようとするのに何年も忙しくなるでしょう」と語ります。「本当に息を呑む画像です」(Berghmansさん)

【▲ 太陽探査機「ソーラー・オービター」の極端紫外線撮像装置(EUI)を使って撮影された太陽の姿(Credit: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team)】

太陽の北極や南極が太陽活動を解き明かす鍵になると考えられていることから、ソーラー・オービターは惑星の重力を利用したスイングバイを何度か実施して軌道を変更し、太陽の極域を観測できる傾いた軌道に入ることが計画されています。ソーラー・オービターによる次の接近観測は2022年10月13日で、太陽に0.29天文単位まで接近する予定です。

 

関連:太陽から飛び出した超巨大な紅いループ。ソーラー・オービターが捉えた記録的プロミネンス

Source

Image Credit: ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team ESA - The Sun as you’ve never seen it before

文/松村武宏

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