明るく輝く中心部に向かって曲がりくねった2本の渦巻き状の腕は、銀河を見ているように思わせるかもしれません。しかし、この画像に写っている天体は、私たちの天の川銀河の中にある「惑星状星雲」です。
惑星状星雲とは、1700年代に望遠鏡で見た星雲が巨大なガス状惑星に似ていたことから、このように呼ばれるようになりました。実際は、星の寿命が尽きる一歩手前の姿なのです。
この惑星状星雲は、「PK 329-02.2」と呼ばれ、南天の「じょうぎ座(定規座)」にあります。1922年にこの星雲を発見した天文学者ドナルド・メンゼル(Donald Howard Menzel、1901-1976)に因んで「メンゼル2」や「Mz 2」と呼ばれることがあります。
太陽ほどの質量を持つ恒星は、寿命が近づくと赤色巨星となりガス状の外層を放出します。ガス状の雲は、中心星が放出する紫外線によって照らされ輝きます。また、中心星から離れるにつれて、不規則で複雑な形状に変化していきます。この複雑さは、画像中央に見えるかすかなガスの散乱にも表れています。
しかし、PK 329-02.2 には美しい対称性があり、2本の明るい青い渦巻き状の腕が、星雲の中心にある2つの星と完全に一致しています。1999年、右上の星が星雲を作った中心星であり、左下の星は中心星の伴星であることが発見されました。
2つ星は何百万年、何十億年と互いの周りを回り続けますが、星雲と渦状の腕は中心から広がり、やがて数千年かけて消えていきます。PK 329-02.2の湾曲した構造は、白色矮星として最終段階を迎える前の、最後の別れのようです。
この画像はハッブル宇宙望遠鏡によって撮影され、2015年10月に「Waving goodbye」として「ESA/Hubble」に、2016年10月に「Hubble pictures planetary nebula with spiral arms」として「ESA」で紹介されました。
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA ESA/Hubble, ESA文/吉田哲郎