こちらは「おひつじ座」の方向約2500万光年先にある矮小不規則銀河「NGC 1156」です。矮小不規則銀河とは、数十億個ほどの恒星が集まった「矮小銀河」のなかでも、星やガスが不規則に分布している銀河のこと。矮小銀河は、天の川銀河と比べて規模が100分の1程度の小さな銀河です。
NGC 1156のあちこちにみられる赤い領域は「HII(エイチツー)領域」と呼ばれるものです。HII領域では、若くて高温な大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが赤い光を放っています。HII領域はガスと塵を材料に星が生み出される星形成の現場でもあることから、星形成領域とも呼ばれています。
画像を公開した欧州宇宙機関(ESA)によると、地球から1000万パーセク(約3260万光年)以内にある銀河のうち、ある時点までに「ハッブル」宇宙望遠鏡を使って星々の性質を詳細に研究するための観測が行われたことがあるのは、4分の3に限られていたといいます。そこでハワイ大学の天文学者R. Brent Tully博士らは、ハッブル宇宙望遠鏡が他の天体を観測する合間の時間を利用して、残る4分の1の銀河153個の観測を提案しました。
冒頭の画像は、Tullyさんたちの提案にもとづいてハッブル宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って新たに取得された画像も使って作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2022年8月22日付で公開されています。
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. B. Tully, R. Jansen, R. Windhorst ESA/Hubble - A Marvel of Galactic Morphology STScI - PROGRAM INFORMATION文/松村武宏